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無料ハザードマップ 家選びへの役立て方

無料ハザードマップ 家選びへの役立て方

「最近台風や豪雨で水害のニュースをよく聞くようになった。これからマイホームや不動産を選ぶときに、事前に考慮できないの?てか業者がちゃんとしてないの?ハザードマップは知ってるけど、浸水エリア内は買っちゃダメってこと?」

このような疑問に、設計士として建物づくりに15年間取り組んできている筆者よりお答えします。

疑問の答えを先に言うと、

  • ハザードマップを使えばマイホーム選びに水害リスクを考慮できる。というか、必須ですべき。
  • 業者がハザードマップの水位に対策する法的義務はない現実がある。
  • ハザードマップの水位が意味する具体的なリスクを把握すれば、逆に浸水エリア内でもリスクを取っての購入判断可能。

となります。

この記事はハザードマップの探し方、複数種あるハザードマップの使い分けを知っていることが前提で書かれています。

マップは行政が作っており、だれでも無料で簡単・短時間に見られますから、まだの方は 洪水ハザードマップ 探し方・見方と役立て方 を閲覧ください。

以下では、主要ハザードマップである洪水ハザードと内水ハザードの二つのマップを家選びに役立てる方法を解説します。

ハザードマップを使った家選びの方法

いきなり身も蓋もないですが、水害リスクを避けるにはハザードマップで色のついた浸水エリアを避けて家の購入を考えるのがベストの方法です。

しかし現実の家選びでは、予算、職場アクセス、縁戚関係の事情で浸水エリア内のマイホーム購入を検討せざるを得ないケースも沢山あると思います。

あるいは昨今の水害で著しく評価の下がった浸水エリア内で、逆にあえて狙い目を探したい人もいるかもしれません。

記事ではそういった事情の方に役立つ家選びの方法として、マップを使い事前に水害リスクを想定し、あらかじめ対策を施しておくことでリスクヘッジする方法をご紹介します。

この記事は実際にプロが浸水対策を考慮しながら建物を設計する際、調査し対策する手順を家庭用に落とし込んだものです。

ですのですこし難しく感じるかもしれませんが、できるだけ自宅のインターネットだけで手順を完結できるようにまとめています。ご利用ください。

浸水エリア内のリスクと対策

業者に浸水対策を強制する法律はない

まず大前提として、ハザードマップの浸水エリア内に建物があっても、業者には浸水対策を建物に施す法的義務はほぼありません。

稀にあっても地下室の浸水対策を届ける制度が自治体の条例レベル(東京都新宿区など)であるくらいで、なんとも頼りないものです。

あとはせいぜい契約前の重要事項説明のさいに、土地がハザードマップの水位何mのエリアにあるのかを告知する程度です。

この現実を踏まえ、ハザードマップのリスクと対策は予め記事を読み自分で確認しておくようにしましょう。

水位別にありうるリスクと一般的な対策を把握する

買いたい家・土地のある場所の全ての洪水ハザードマップと内水ハザードマップ水位を調べたら、以下のリスク/対策一覧表に沿ってどんなリスクがありえそうか把握してください。

ハザードマップ水位(m)リスク候補対策
0超~0.5以下 床上浸水(物損)土嚢、上げ床、1階非居室化
地下室浸水 排水設備
汚水逆流 排水口上げ
電気系統破損 水位より上に設置
0.5超~1.0以下 床上浸水 1階非居室化
地下室浸水 ー(地下室は浸水する)
汚水逆流 ー(排水口は水没する)
電気系統破損 水位より上に設置
断水 備蓄
孤立 備蓄
1.0超 床上浸水 1階非居室化
地下室浸水 ー(地下室は浸水する)
汚水逆流 ー(排水口は水没する)
電気系統破損 水位より上に設置
断水 備蓄
孤立 備蓄

対策がなく、本当に起きうるリスクを確定する

水位別にありうるリスクの候補を把握したら、再びハザードマップを片手にリスク対策の有無をCHECKします。以下より該当候補のリスク欄のみ拾い読みしてください。

床上浸水

洪水が起きなくても、内水氾濫によって引き起こされることがあります。

少なくとも内水氾濫に対してはヘッジしておかないと、長年の生活では耐えられないものです。内水氾濫は洪水に比べずっと高頻度に起こりえるからです。

この氾濫水は下水の逆流を伴っており、不衛生なものです。

道路高低差まで考慮しても水位が床高さを超えるなら、床上浸水のリスクは有ります。超えていなければ、上げ床によってヘッジされていると考えます。

ただし、水位が床高さを超えていても、外壁に止水性があり出入口を土のうや止水板で水位高さまで塞げるならば、ヘッジされていると考えます。


洪水ハザード、内水ハザードの水位が建物の床高さより高いかを確認します。

床高さを調査できない場合、一般に浸水対策のない床は地面から0.1~0.3m程度なのでその値とみなします。

床が低くても地盤自体が道路より高くなっている場合は、その高さは浸水対策に有効です。グーグルストリートビューで観察しましょう。

例えば地盤が0.3m道路より高いなら、床高さに+0.3mして構いません。道路が複数ある場合は、一番低い道路と比較して良いです。

ただしこのような高低差地形の場合は、土砂災害ハザードマップがないか必ず確認してください。 水害よりずっと深刻です。

逆に、床が道路より低くなっている建物もたくさん存在します。

特に容積率が高く高さ制限の厳しい、駅前市街地の3~15階建物に多くあります。理由は割愛しますが、14階建は大丈夫なことが多いです。

床が道路より低い場合、もちろん床高さからマイナスして確認します。

道路高低差まで考慮しても水位が床高さを超えていた場合、出入口付近に水位高さまでカバーできる土のうや止水板を用意してヘッジしても良いです。

業者によっては止水板を建物に装備している場合もあります。

地下室浸水

完全防水対策の地下室は建設費が高すぎて考慮に値しないレベルであり、従って一般の住宅建物で完全対策なされている例はレアです。

このため完全防水地下室は探すのも見積もるのもまず時間の無駄になります。完全防水が無い前提で対策の有無を確認します。

地下室のある場合、出入口を止水板で水位以上に塞げるならばヘッジされていると考えます。

塞げないならば浸水しますが、被害の小さい空間用途ならばリスクを許容しても良いと思います。


地下室のある場合、床上浸水のときと同じ方法で止水板を確認します。

なければ浸水しますが、地下空間の用途によっては差し支えないものもあるので確認します。

雨水槽や防火水槽、湧水ピット(ピットとはメンテナンス用の空間です)などの水槽系用途なら浸水しても概ね問題ありません。

一般には、配管ピットとなっていることが多いです。この場合配管は破損する場合もありますが修理できます。

この配管破損リスクに建物で対策している例はレアであり、このリスクを嫌うと浸水エリアの建物はほとんど買えなくなってしまいます。現実にはあまり気にしない方が賢明でしょう。

自転車置き場やごみ置き場、倉庫程度の用途になっている場合は、物損リスクを許容できるか個人判断です。

駐車場や電気設備室のあった場合は、そこの車両・設備は全損すると思っておいた方がよいです。

居室の場合は、完全防水などよほど対策の無い限り危険で不適切な設計だと思います。

ドアの外に水が来れば水圧で扉は開かず避難もできません。ヘッジできないので他の建物を探したほうが良いです。

汚水逆流

内水氾濫によって起こる浸水を、土のうや止水板で防いでも起こりうるのが特徴です。

洗濯機置き場など低い位置にある排水口から汚水が逆流してきます。

洗濯機置き場など低い位置にある排水口高さが、水位より高いか確認します。水位より低ければ汚水逆流リスクはあります。止水板や土のうは無効です。

ただし、建物の排水系統に逆流防止機構が設けてあれば水位に関わらずリスクはヘッジされていると考えます。


まず洪水ハザード、内水ハザードの水位が建物の床高さより高いかを確認します。

床高さは床上浸水のときと同様、道路からの高さを考慮して確認します。下水管は道路の下に埋まっているからです。

前の項目で床上浸水に該当していた場合は、そもそも排水口自体が水没するので汚水は逆流します。

ただ、この欄を読んでいる方のなかには、洪水時は水没水位、内水時は床上浸水しない水位あるいは止水板装備だったというケースの人も多いと思います。

この場合は次に、洗濯機置き場など低い位置の排水口を、想定水位より高い位置に上げているか業者に確認します。たまにパンフレットに書いてあることもあります。

また、庭がある場合、庭に雨水桝がないか確認します。あると水位によって道央に逆流のおそれはあります。

ただ庭はあまり物損しないでしょうから、許容できるか個人判断です。

最後に、建物によっては排水系統に逆流防止機構を設けている場合があるので、業者に問い合わせて有無を確認します。

逆流防止機構があれば対策されているので、全ての汚水逆流リスクはなくなります。

電気系統破損・断水

電気系統破損リスクは、特に4~5階建て以上の中高層建物で要注意です。

エレベータや電灯の故障は誰でも想像すると思いますが、それ以上のリスクとして、増圧ポンプが故障すると断水します。

増圧ポンプを含む電気設備が水位より高い位置かを確認します。水位より低ければ設備故障リスクがあります。

ただし、水位が設備高さを超えていても、設備を取り巻く外壁に防水性があり出入口を土のうや止水板で水位高さまで塞げるならば、ヘッジされていると考えます。


電気系統の各種設備が水位より高い位置にあるか確認します。これは業者に問い合わせないと設置位置を確認できないことが多いです。

増圧ポンプの位置も忘れず確認します。高さの基準は床上浸水の時と同じで、道路からでよいですが、業者から聞けるのはおそらく床からの高さまででしょう。

あとは自分でストリートビューを使えば床と道路の高さ関係はだいたい分かると思います。

次に自分の狙う階が3階以下かを確認します。3階以下であれば増圧ポンプが故障しても水道管自体の水圧で給水できます。

従って一般的な3階以下の戸建てには、この断水リスクはありません。他の設備故障リスクのみ検証しておけば良いです。

孤立

自分の立地のハザードマップだけを見ていると、完全に見落としてしまうのがこのリスクです。山間部、埋立地、河川に囲まれた土地を狙う場合は想定に入れてください。

自分の土地でなく周囲の町全体の洪水ハザードマップ水位が0.5m程度以上ある場合、付近の河川が氾濫して橋が使用不能になる可能性を考慮します。

町が山間部、埋立地、河川に囲まれた地形で橋が少ない・低い・脆い場合は孤立リスクがあります。


洪水ハザードマップを見て、自分の狙う立地が無事でも周囲の水位が0.5m 程度あるか確認します。内水マップは確認不要です。

次に、立地が山間部、埋立地、河川に囲まれた地形であった場合、周囲の橋の数・太さが少なすぎないか、小さすぎないか確認します。

自宅が無事でも周囲に洪水ハザードの水位があるならば、河川は氾濫水位まで増水しうることを意味しており、低い橋・脆い橋は使用不能になります。

このときは浸水しなくても、物資が非常に不足します。交通も徒歩のみになります。周囲の町やインフラの復旧も長くかかります。

未対策で残ったリスクの想定発生頻度を考慮する

ここまでCHECKしてきても対策が見受けられず残ってしまったリスクは、本当に起きうるリスクです。

次の段階として想定発生頻度を考え、自分でできる対策と組み合わせて許容できるか最終判断します。

水害リスクの想定発生頻度を考慮する

水位の該当したハザードマップの種類によって、そのリスクの想定発生頻度が分かります。

マップの種類想定発生頻度
洪水ハザードマップ低頻度。河川によって異なり、100~1000年に一度の堤防決壊を想定。頻度はマップに書いてあることも。
内水ハザードマップ高頻度。集中豪雨によって数年に一度起こりうる。

洪水ハザードマップの水位による残存リスクは、おおむね一生に1、2度程度起こりうる頻度想定です。頻度は低いですが水位は高い傾向です。

警戒レベルとは何か 洪水ハザードマップ併用避難計画 で避難に支障がないか確認し、家族に歩行困難者がいるなどで無理があると思ったら購入判断を思いとどまりましょう。

なんとか避難できそうなら、備蓄を備え、保険の併用も検討して、頻度を考慮して最終可否判断してください。

自由設計なら1階をごみ置き場や駐車場、玄関などの非居室に限定し、リスクを自身の許容範囲まで抑えることも有効です。あるいは、そうした建物を探すのも良いでしょう。

内水ハザードマップの水位に該当する残存リスクは記録的短時間大雨のたびに起こりえますから、保険で金銭的にヘッジしても衛生上、生活の長きにわたって悩まされうるので考えどころです。

想像してみて耐えられないと思ったら、これ以上の対策方法はありません。別のエリアで家探しするのが賢明です。

数年に一度なら保険と併用して頑張れるかもしれないという場合は、最終購入判断も成り立つかもしれませんが覚悟は要ります。

水位は低く水はすぐ引くので、洪水に比べ生命の危険は少ないです。1階を非居室にしてしまう方法もリスクの低減に有効です。

家選びの他の諸条件と比較し総合的に判断したいという場合は、 マイホーム住宅購入 プロの選び方ポイント で諸条件の優先順位をまとめていますから、判断にお役立てください。

ハザードマップを家選びに使ってみよう

ハザードマップを調べるのは無料で簡単です。それでいて見られる情報は行政が作っており正確無比なものです。

避難に役立てるために作られたものですが、この値千金の情報をぜひとも自分の家・不動産選びにも活かしてしまいましょう。

これからマップの全国的な整備が進むにつれ、あるいは豪雨が慢性化するにつれ、いずれは業者に対策を義務付ける法律も追い付いてくると思います。

しかしそれが過渡期の今は、本当に建物ごとに水害対策のされ方が千差万別です。今こそがハザードマップを自分の目で見て判断に役立てるべき時と言えるでしょう。