新しく買ったスマホにQiワイヤレス充電機能やMagSafeがあると知ったら、試してみたくなるのが人情ではないでしょうか。
初めて使おうとする人はわくわくし、経験者は思ったより不便なことが多いと知っているのが、置くだけワイヤレス充電の実態です。
この記事では、これからワイヤレス充電機器を揃えようと思っている方、あるいは以前揃えたけど結局不便で使っていない方に向けて、そもそも冷静に考えてワイヤレス充電のメリットはあるのか、買う前に気づいておきたいデメリットは何なのか筆者の体験をもとに整理してお知らせします。
そのうえで、ワイヤレス充電が真価を発揮する使い方の例として編み出した方法をお知らせします。もう買ってしまった後でも、有効な使い道の参考になるでしょう。ご覧ください。
ワイヤレス充電の本当のデメリット
ワイヤレス充電のデメリットとしてよく紹介されているのは、充電が遅いとかスマホのケースが厚いあるいは金属だと充電できないとか、あとは位置ずれと発熱の問題などです。
しかし充電の遅さは承知のうえ、スマホのケースも合うものを探し、発熱は品質を信用できるメーカーの物を探すとしても、それでも購入前に一度考えてみるべき本当のデメリットが別にあります。
それは、買う前にわくわくイメージしていたような使い方が、実際はほとんどできないことが多い、という点です。
以下で紹介していくので、どんな使い方が無理なのか事前に確認しておきましょう。
鞄にスマホを放り込んでのワイヤレス充電はできない
ワイヤレスモバイルバッテリーを鞄に仕込んでおいて、スマホを鞄のバッテリーのある位置に放り込んでおけば移動中に充電されるといった使い方です。
これはワイヤレス充電が位置ずれに弱いというデメリットのため、実際にはうまくいきません。
ワイヤレス充電器はかなり位置取りにシビアで、スマホを密着するだけでなく相互の内部コイル位置が一致しないと充電されません。
記事公開時点の2020年4月には存在しませんでしたが、2023年9月現在はMagSafeを用いてこの問題を解決する製品が登場しました。
従来このようなモバイルバッテリー型の場合、問題は位置合わせだけでなく手動でスイッチONする冗長な手間がありました。待機電力対策のためそういう製品仕様にせざるを得なかったからです。
現在はその問題もMagsafe接続時に自動ONとなる仕様になっており、解決されています。
机の上に充電台を置いてのワイヤレス充電はすごく不便
机の上(もしくはテーブルクロスの下とか玄関わきの棚など)にワイヤレス充電器を設置して、そこに置いて充電するという使い方です。
これには有線に比べ半分以下となる充電の遅さと、置きながら手に取れないので充電しながら使いづらいというデメリットがダブルで効いてきます。
要するに置くだけ充電中はスマホを手に取れなくなるので、実質かなり長時間スマホが使用不能になるわけです。
動画には使えるかもしれませんが、本当に充電台に乗せたスマホで長時間動画を見るでしょうか?手に取って寝転んで見たり、持ち歩いて見たり、普段どちらかというとスマホでの動画視聴はそういう使い方をしているのではないでしょうか。
カーナビしながらQi充電
充電しながらナビなどの映像+音声+ネットワークといった重いスマホ使用は発熱を招き、電池寿命をかなり早く劣化させます。
また、AppleCarPlayやAndroidAutoといったスマホ接続カーナビの仕様が最初から自動車に備わっていることがあり、その場合そもそも優先接続が必須であることもあります。
記事公開時点の2020年4月には存在しませんでしたが、2023年9月現在は冷却機構を用いてこの問題を解決する製品が登場しました。
従来この問題はカーエアコンの吹き出し口にスマホを設置することでDIY的対策が可能でしたが、カーエアコンの出力を阻害するデメリットが有りました。現在は製品単独で冷却が可能となっています。
ワイヤレス充電 二つのメリット
なにをやらせても、帯に短したすきに長し。。そんなワイヤレス充電ですが、置くだけで充電できるという唯一のメリットを活かした便利な使い方があります。それは、寝る時の充電と、モバイルの充電です。
1.寝る時に最適なワイヤレス充電
充電というのは寝る前に行うことが多いと思いますが、寝ながらスマホを使用して寝落ちしそうなときなど、充電ケーブルの抜き差しは面倒で忘れがちです。
また、暗い寝室でケーブルを探しての抜き差しは手間であり、端子を痛めます。
置くだけワイヤレス充電はそれらの問題を解決するひとつの良い方法になります。というか、これこそワイヤレス充電にしかできない役割ともいえるものです。 寝る時は何時間も充電できるので、充電の遅さは問題になりません。
ストレスフリーにワイヤレスでの寝ながら充電を成功させるには、この目的のために最適化したワイヤレス充電器が必要になります。
寝る時のワイヤレス充電器は長方形かMagSafeがベスト
寝る時のワイヤレス充電器に必要な機能は、寝ながら適当でも位置合わせに苦労しない形状であることです。
それは、長方形のワイヤレス充電器です。スマホが長方形だからです。手探りで簡単に、重ねて外形を合わせるだけで正しい位置取りができます。
欲張って2パッド形状のものなどを選ぶとこうした使い方ができなくなります。また、スタンド形状は寝返りで倒れてしまいやすくイマイチです。フラットな長方形タイプがベストです。結果的にコンパクトで廉価な結果を得られます。
なお、iPhone12,13系ユーザーに限られますが、磁石で位置合わせしてくれるMag Safeならば形状は円でも何でも構いません。12,13系を持っている人は活用しましょう。SE2しか持ってない筆者としては羨ましい限りです。
2.モバイルに最適なワイヤレス充電
モバイルに最適なワイヤレス充電の真価は、持ち歩くケーブルを無くせる、1本減らせる点にあります。持ち歩く端末がワイヤレス対応のiPhoneスマホだけなら、ワイヤレスモバイルバッテリーをひとつだけ持ち歩けば、あのウザくてダサいケーブルも、かさばってコンセント探しにさまよう充電器も、不要になります。
ワイヤレスは有線に比べ充電速度が1/2程度に落ちるので、モバイルでの充電能力自体は応急処置的な場面が多くなります。多くは、電車とか移動中に必要になるでしょう。
従ってモバイルに最適なワイヤレス充電器もやはり、長方形のワイヤレス充電器ということになります。重ねて握るだけで、充電しながら操作もできるからです。
ワイヤレス充電器のデメリットをクリアする
これでワイヤレス充電の真価を発揮できる二つの場面と、長方形という最適な形状が分かりました。
最後に、冒頭のデメリットをクリアした製品を厳選していきます。
まず充電速度についてですが、寝ながら充電は充電時間がたっぷりとれるので、充電スピードは遅くても構いません。しかしモバイルについては、早ければ早いほどいい。ならばやはり、早いものを志向すべきでしょう。
2010年以前の古い製品は出力5Wが上限ですが、今はそんなに価格差はないので、今から買うなら10W以上の出力が有るものを選ぶと良いです。大は小を兼ねます。
iPhone,Android MagSafe,Qi充電ワット(W)対応一覧表
充電ワット(W)対応表 | 5W | 7.5W | 10W | 12W | 15W | 18W | 20W |
iPhone13/13Pro/13ProMax | Q | Q | M | M | M | C | C |
iPhone13mini | Q | Q | M | M | C | C | C |
iPhone12 | Q | Q | M | M | M | C | C |
iPhone12mini | Q | Q | M | M | C | C | C |
iPhone SE3 | Q | Q | C | C | C | C | C |
iPhone SE2 | Q | Q | C | C | C | C | ー |
iPhone11/11Pro/11ProMax | Q | Q | C | C | C | C | ー |
iPhoneX,XR,XSMax,XS | Q | Q | C | C | C | C | ー |
iPhone8,8Plus | Q | Q | C | C | C | C | ー |
Android | ※1 | ※2 | ※3 |
Galay S7以降、Galaxy Note8以降、isai V30+以降、Pixel 3以降(Pixel Stand使用時)など ※3Mate 20 Pro以降(HUAWEI Wireless Charger使用時)
Qは、Qi規格によるワイヤレス充電対応です。Mは、MagSafe規格によるワイヤレス充電対応です。Cは、有線ケーブル充電対応です。ーは、対応しません。
例えば上の表でiPhone12miniの場合、「M」MagSafeなら12Wまでの充電に対応し、それ以上高出力で早く充電したいなら「C」ケーブル有線で充電し、最大でも18Wまで受け入れられる、と読みます。
iPhone 12,13系はMagSafe対応で磁石が埋め込まれているため、MagSafe以外の従来Qi充電器は磁力が干渉してうまく充電できない場合があります。
発熱対策はメーカーをチェック
つぎに発熱対策ですが、個人でできるのは少なくとも使っているスマホメーカーが公式に認めているメーカーのワイヤレス充電器から選ぶことです。
iPhoneの場合、それはAnkerかBelkinです。どちらもApple公式サイト内で公式に製品が販売されています。
この記事公開当初2020年4月には10Wおよび公式準拠メーカーの条件に合うモバイルバッテリータイプの製品は存在しませんでしたが、最近はAnkerから立て続けに優れた製品が出ています。
また、モバイルタイプはできる限り大容量のものが適します。容量が小さいと頻繁に充電が必要になり、大変手間なうえにバッテリー寿命を縮める結果となるからです。容量の小さいもので軽量化したとて数百グラムの差で、増える手間と割りに合ってきません。
ワイヤレス充電はベッドサイドから始めよう
ワイヤレス充電のデメリットとメリットを概観すると、実は充電の遅さと発熱というデメリットがまだあり、発展途上の製品であることが伝わったでしょうか。
デメリットを把握せずに期待先行で機材を買い集めてしまうと、結局不便で使わなくなってしまいます。
ですが記事では、そんなワイヤレス充電の実力を発揮できる、寝る時充電とモバイル充電のシーンに限定した機材の選び方をご紹介しました。
すでに機材を持っていてお蔵入りしている方も、今一度この記事の使い方で活躍させられないか、検討してみてください。あなたの生活を少しだけ、きっと便利なものにしてくれるでしょう。
記事初出2020.4月から2年以上経った今は、優れた製品が出揃いました。再開も含め、無線充電を始めるのに好適な時期がやっと巡ってきたといえます。記事の全ての条件に一致する製品は、以下の双璧です。
MagSafe対応iPhoneをお持ちの方は、以下の製品が対応します。
ワイヤレスモバイルバッテリーを持ち歩くならケーブルは不要ですが、このバッテリー自体を最高効率で充電するには、少なくとも以下のケーブルと充電器が妥当です。
また、パススルー充電(バッテリー自体を充電しながらワイヤレス充電を並行する)の機能を活かすにも、やはり以下のような高出力対応の機器が必要です。
より詳しく選択肢を吟味したい方は、リンク先の記事をご活用ください。
おまけ:NFCタグで睡眠ルーチンも自動化する
比較的新しいiPhoneをお持ちの方であれば、NFCタグを使って音量オフやお休みモードONなどの睡眠時ルーチンを、寝ながら充電と同時に自動的にやってくれるようDIYすることができます。
NFCは工夫次第で他にもいろいろ自動化できる可能性のある技術です。興味のある方は、 iPhone NFCとQiで寝ながら充電オートメーション化 をご覧ください。
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