呼び継ぎの安全格安DIY方法 組替ペア金継ぎを作ろう

金継ぎとは、壊れた陶器を直し、亀裂に沿って金色を塗る日本の伝統技術です。

欠けた食器のパテ補修 食品安全性素材でバラバラ食器も再生では、金継ぎする時に大きく欠けた足りないピースのところには、まったく関係ない別の破片を持ってきて埋め込めば独創的なデザインができると紹介しました。

この知恵は日本の昔からあり、呼び継ぎという伝統技法です。

呼び継ぎの安全格安DIY方法 組替ペア金継ぎを作ろう

言い伝えによれば、呼び継ぎの破片は陶芸工房などに落ちて余っている破片を組み合わせて作ったとされていますが、私たち一般人にはそうした持ち合わせはありません。

そこで今回は、高額なワークショップ等に頼らず100均食器を使って自宅で安全格安に呼び継ぎする方法をご紹介します。

とはいえやたらに陶器を叩き割って破片をかき集めるのは少々野暮です。

ここでは、色違いの同型食器2つを用意することで、互いの破片を組み替えて新たに2つの呼び継ぎ食器を生む方法をご紹介したいと思います。

互いの破片を組み替えて新たに2つの呼び継ぎ

なお、この方法は当サイト読者の方からツイッターに寄せられた実際の例に触発されてまとめたものです。

呼び継ぎ自体は古来ある技法ですが、2つの同型異色器を互いに組み替えるという発想は、伝統に囚われず柔軟で卓越したものだと思います。

結果として、互いに大変よく似ているのに、少しも同一の部分は無いという、素晴らしいペア陶器デザインの制作を可能にしました。

ペア陶器デザインの制作

みなさんもぜひ挑戦し、うまくいったら友達に教えてあげてください。そして、ぜひ自由な発想で、素晴らしいあなたのアイデアも実現してみましょう。

ここはその第一歩です。早速ご覧ください。

この記事で扱う組替呼び継ぎの技法は、金継ぎ及びパテの基礎技術を組み合わせて使います。

また、2つの作品を同時に作るうえに破砕と組み立て工数が基礎技術金継ぎの3倍かかります。

初めての方は、まずは上記リンク先から簡単な普通金継ぎをトライし、2回目以降でこの記事の組替呼び継ぎに挑戦してみる事をお勧めします。

すでに基礎技術で食器を修理し、買った材料がまだ余っている。。という方は、ぜひこの記事を読み進めてください。この記事はあなたのような方のために作りました。また楽しんでください。

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食器を選ぶ

食器を選ぶ

食器でなくとも陶器やガラスなど大抵のやきものの破片で呼び継ぎは可能です。金属、木材、プラスチックなど酸に弱いものや燃えるものは不可です。

しかし初めてならばまずは安くて簡単、ラインナップ豊富な100均食器売り場から、同じ形で色違いの陶器を探してくることをお勧めします。

今回はキャンドゥで見つけた100円の色違い食器で実演しますが、もちろんどういう品で組み合わせるのも自由です。オーブン不可の品でも構いません。植木鉢や珪藻土コースター、箸置き、コーヒードリッパーなどその他の陶器類でもできます。

破砕する

破砕は少し罪悪感を感じるかもしれません。

しかしこの方法ならば無駄にする破片は粉一粒に至るまでほとんど無いので、壊すというより加工の一環です。成功を信じてハンマーを振るいましょう。

破砕する
机の上で撮影していますが実際は土間床でやってください。
かなり硬い床でないと打撃に対する反力が足りず、なかなか割れてくれません

破砕する食器を紙皿に載せてビニール袋に入れ、玄関土間やベランダなど硬い床に置いてトンカチやドライバーの尻など硬いもので叩き割ります。

弱い力でコツンコツンと始め、だんだんゴツンゴツンと強くして感覚を掴み、最後にガツンといくイメージです。

最後にガツン

筆者は勢い余って食器を爆発させてしまうこともあるのですが、仮にそこまでのレベルで崩壊したとしても再生できるので大丈夫です。勇気を出してやってみましょう。

割れ方が千差万別な自然のオリジナルになるのも、この製法の妙味です。

粉々になった粉末

この時、余りにも小さい破片や粉々になった粉末も、捨てずに集めておきます。色違いは混ぜて構いません。

この破片カスをさらに砕き、パテを作るのに使えるので取っておいてください。パテは、あとで組み立てるとき隙間を埋めるのに使います。

破片を組み替える

いったん同色同士で組み直し復元する

破片を組み替える

普通の金継ぎ修理と異なり、組替えた破片は互いにピッタリとは嵌まりません。ここが悩ましいところです。

どういう組替えでも自由ですが、最初はいったんそれぞれを元の色だけで仮組してから、部分的な箇所だけを入れ替えるようにすると比較的楽です。

いったん同色同士で組み直し復元する

こんな風にまずは元の色同士だけで仮組し、破片の位置関係全体像を把握しましょう。

異色破片と部分的に入れ替え、再破砕する

次に異色破片の中から、似たような大きさの破片を探して入れ替え、あてがってみましょう。

口の当たるフチの部分は、入れ替えた後も出来るだけ、同じフチの色違いパーツが来る様にするのが最初は簡単に仕上げるコツです。少なくとも尖った部分が口元に来ないようにしましょう。

最初は筆者の経験から一番簡単と思われるコツを提供しました。とはいえこれが絶対というわけではありません。

例えばあえて口元のパーツをすぼまった形にすることで、元の食器には無かった注ぎ口を形成したり、底に穴を残してオリジナルコーヒードリッパーを作ったりできるでしょう。

大切なのは、あなたにとって面白いと思えるものができるかどうかです。それさえできれば、他の細かいことは正しくなくても、不格好であっても、あなたにとって唯一無二の価値を持ったものといえるでしょう。

面白いことが出来たら、Twitterの私のところで知らせてくださると嬉しいです。当サイトでご紹介させていただくかもしれません。みんなで楽しみましょう。

異色破片と部分的に入れ替え、再破砕する

さて、部分的に入れ替えるピースを決めたとしても、実際はうまくいきません。まだ、どうしても互いのピースが大きすぎて嵌まらないと思います。

該当の破片のみを再度紙皿袋に入れてさらに割る

その場合は、該当の破片のみを再度紙皿袋に入れてさらに割り、破片を小さくしていきます。口の当たるフチのパーツは壊さず、それ以外を割って縮めるのが望ましいです。

破片を小さくしていきます

これを、互いのピースが狙った位置にはまる大きさになるまで繰り返します。砕くのに苦労が多いと感じたら、柔らかい場所で作業してしまっていないか再確認してください。

玄関土間やベランダなど硬い床でやればだいぶ違ってきます。面倒でも移動して砕いた方が早く決着がつきます。

組替えレイアウトを完了

良い大きさに砕けたら、位置関係が分かるよう並べ直して組替えレイアウトを完了させます。

なおいくつかの破片は未使用で余る場合があります。そういうときは破片を保管しておき、いずれ別の機会でまた呼び継ぎに使うと良いでしょう。

同色同士から組み立てる

破片ピースの組替え位置関係レイアウトが決まったら、組み立てていきます。

まず、同色同士のピースはピッタリ嵌まる物が多いはずなのでこれを再度仮組し、異色破片が付く予定の箇所に目印をつけます。

同色同士から組み立てる
接着作業に入る前に、手元にティッシュペーパーを用意しておいてください。手やボトルキャップを拭くのに便利です。

目印の箇所以外に、食品安全接着剤、タイトボンドを塗って接着します。目印を付けたところはまだボンドを付けません。間違って付けたら指で拭き取りましょう。

タイトボンドを塗って接着
久々にタイトボンドを使うときは、使用前によく振ってください。水分と分離していることがあるので、振って戻します。これは米国公式サイトに案内されている方法です。

オープン/クローズドタイムなど接着技法は安全・簡単格安DIY 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方を参照してください。

オープン/クローズドタイムなど接着技法

組立は素手で行います。素手じゃないとピースのズレや段差を感じられず、組立がはかどりません。食品にも安全な接着剤なので、手袋不要で組み立てられます。小学校の木工ボンドのような感覚で使えます。

組立は素手

異色が付く予定の箇所のみ残し、クローズドタイムが終わったら、楊枝や指で大雑把にはみ出たボンドを拭き取ります。

下台
後で洗浄できるので、食器がデロデロに汚れても気にしない

これでおのおの同色同士の組立が終わり、それぞれ下台と未接着の異色破片が揃いました。

パテを調合する

パテを調合する

欠けた食器のパテ補修 食品安全性素材でバラバラ食器も再生の技法を参照し、パテを調合してください。ただし、今回は穴埋めの体積が多い技法のため、破片カスだけではセラミックの分量が足りません。

他の陶器から破砕して集めるのも量的に大変なので、今回はあらかじめセラミックパウダーを購入しておいた方が良いです。混ぜて使っても構いません。

呼び継ぎする

呼び継ぎする

いよいよ組替え呼び継ぎします。下台に異色破片をあてがい、パテをどの辺りに盛ったらいいか、スキマの大きさと位置を把握します。

把握したら、爪楊枝でパテをまず下台の側にのみ盛ります。

パテをまず下台の側にのみ盛ります

盛ったらその上からタイトボンドをかけ、異色破片の小口にもタイトボンドをたっぷり塗って、オープンタイム(塗った後空気にさらして置いておく最適開放時間。接着剤に粘りを出させて作業しやすくする)を長めの10分とります。

盛ったらその上からタイトボンドをかけ
異色破片が複数ある場合は、このように先に異色破片同士をくっつけて合体させておき、最後にまとめて呼び継ぎした方が楽です

10分経ったら、破片を下台にそっと載せます。しかしスキマが大きいので、破片が安定しないかもしれません。ここが一番の山場です。

一番の山場

安定しない時は指で支えながらひっくり返し、伏せ置きを試してみてください。組立は伏せ置きの方が安定し易いです。

伏せ置き

パテや接着剤の足りていない、スカスカの穴あき部分が残っていても構いません。

この状態でクローズドタイム(仮固定強度が出るまでの放置時間)を長めに20分ほど待ったのち、はみ出しの大きい部分を楊枝や指でそっと拭います。

細かいところは後の最終洗浄で取れるので、あまり今力んで食器を壊さないよう気をつけてください。

力んで食器を壊さないよう気をつけてください

これで呼び継ぎ組立は終了です。できれば1日乾かして、硬化時間を取ってから次工程に移ってください。固めてから移った方が安心して作業に集中できます。

パテで穴を埋め、金継ぎする

パテで穴を埋め、金継ぎする

ここまで来たら、あとは単に欠けた食器のパテ補修 食品安全性素材でバラバラ食器も再生と同じ手順で進められます。

着手前に目立つ汚れは落としておきましょう。硬くなっているところは爪で引っ掻くと取れます。

爪で引っ掻くと取れます

穴の大きいところは段階的に盛っていきます。下記写真のように一層目を盛ったら、クローズドタイム25分乾かしますが、時々ひっくり返して天地逆にしてください。そうすると垂れが防げます。

時々ひっくり返して天地逆にしてください

クローズドタイムを待つ間は、パテにラップを被せておいてください。乾いてしまった場合は、水を一滴だけ入れて混ぜてからラップしましょう。

水を一滴だけ入れて混ぜてからラップ

水は本当に一滴だけで十分足ります。入れるほど強度が落ちるので、できれば入れないに越したことはありません。

クローズドタイムが経ったら次の層を塗っても崩れません。納得いくまで盛っていってください。

クローズドタイムが経ったら次の層を塗っても崩れません

その後は金継ぎパテ記事の時と同様に水漏れチェック後最終洗浄し、好きな道具で金継ぎ塗りを行ったのち、特に今までにも増して念入りに最終乾燥して、焼成してください。パテの量も金継ぎ面積も多いので最終乾燥がより重要です。

水漏れチェック
最終乾燥
焼成

これで2つの異同なる呼び継ぎ食器が完成しました。

友達とつくって、使ってみよう

この組替え呼び継ぎはちょっと工数の多い技法でしたが、すでに普通の金継ぎや呼び継ぎを当サイトで経験した方なら、きっと一発で成功できます。

普通金継ぎがまだの人はぜひ、そちらから覗いてみてください。いきなり組替えから入るのは大変なのであまりお勧めしません。

友達とつくって、使ってみよう

経験者同士なら2人で作ると、ちょうどお互いに破片ピースを出し合ったり、ジグソーパズル感覚でできるので、個人それぞれが黙々と作業するよりずっと有意義な体験ができるでしょう。

1人でも、作品ができたら、今度の来客に使ってみるといいかもしれませんよ。

不思議な一対のカップでお茶を出したら、きっと驚かれるでしょう。世界に二つと類のない紋様なのに、ふたつが互いに良く似ている食器で、どこにも売っていないものですから。

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