欠けた食器のパテ補修 食品安全性素材でバラバラ食器も再生

欠けた食器のパテ補修 食品安全性のある素材で食洗機電子レンジOK

安全・簡単格安DIY 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方 の記事では、金継ぎという伝統技法を現代的なやり方に応用して、壊れた食器や100均食器すら骨董品のようにオリジナルで作り変え、修理する方法を紹介しました。

しかし直したい食器が激しく損傷していたり、かけたピースが見つからない場合はパテ補修という技術で穴埋めをしてやる必要があります。

パテ補修に関する情報はネットに溢れていますが、簡単なやり方はエポキシやレジンなど人体に有害な合成樹脂を用いており、食器に適しません。

また伝統技法で用いられる、米粒を練って混ぜる刻苧漆(こくそうるし)といったような方法は手間がかかる上に、漆は手に触れるとかぶれてしまうため手袋を要し作業を難しくしています。余った材料もそうそう使い道がありません。

そこで記事では、食器のための安全性を最優先に、簡単、安価で金継ぎを再現できる現代的なパテ材料と手法をご紹介することにします。食洗機もOKな素材なので、便利に使っていただけると思います。ご参考ください。

食器に使える安全簡単格安な新しいパテ埋め補修材料

パテ作りは模型の世界では一般的ですが、食器は模型と異なり口に触れる物なので、プラモでよく使われるエポキシやレジンのような有害な合成樹脂はいくら便利だからと言っても使用をはばかります。

タイトボンド

記事ではこれに代わるパテ材料としてタイトボンドセラミックパウダー、そして金継ぎ仕上げ材料としてゴールドライナーを使います。

タイトボンドはFDA(米国食品医薬品局)による食品安全性承認のある接着剤で、固まると強力な耐水性を発揮します。

有機溶剤を用いない水性接着剤で、素手で触れても支障ありません。木工ボンドに近い感覚で使えますが、はるかに強力で便利です。詳しくは 食器に使える接着剤 タイトボンド応用4例 でご紹介していますのでいずれ見てみてください。この製品は粉末を混合しペースト化させて使うことができます。

セラミックパウダーとは、陶器の粉です。もし、あなたが直したい食器の粉々の破片や粉が残っているなら、あるいは代わりに要らない陶器があるなら、セラミックパウダーは購入不要です。陶器片を自分で粉砕して粉にすれば同じように使えます。

ゴールドライナーはフランス製の画材で、ACMI(米国画材工芸材料協会)によるASTM(米国材料試験協会)基準をクリアしたAPマークが付与されており、人体に無害で安全なものです。

この三つでほぼすべてが事足ります。修理のために元の食器よりお金がかかっては本末転倒でしょうから、まずは少ない投資で始めて見ることにしましょう。

電子レンジ、食洗機OK

筆者が実験したところ、修理後は電子レンジも食洗機もOKでした。最近は記事で作った金継ぎカップでよくコーヒーを飲み、都度食洗機で洗っていますが変わらず支障ありません。

厳密にはタイトボンドの米国公式サイトには耐熱温度情報があり、通常4000psiの強度が65度以上で800psiに落ちます。換算すると1平方cmあたり56kgfの力です。大抵の食器の通常使用には耐えると思われます。

ゴールドライナーは元々150℃以上の高熱に耐える設計です。公式情報のQ&Aでは電子レンジOKの記述が確認できます。

それでは、以降の記事で手順をご紹介していきます。

タイトボンドでパテ補修する

冒頭案内しましたが、直したい陶器やガラス器の損傷が3㎜以下程度と小さいか、割れた破片のピースが全て揃っているならば、この記事のパテ技術は不要です。冒頭のリンク先から金継ぎ補修のみをトライしてみてください。

欠けた穴が大きいかピースが足りない方は、記事を読み進めてパテで穴を埋め解決してみることにしましょう。

セラミックパウダーを準備する

セラミックパウダーを準備する

壊れた食器の破片のうち、使い物にならない程細かくなってしまった部分がまだ残っているならば、捨ててしまってはいけません。

これをさらに細かく粉砕してセラミックパウダーにすることができます。あなたの元の陶器と完全に同じ素材なので、ある意味補修には最も理想的な材料です。

あるいは、似たような100均陶器や要らない陶器、他の壊れた陶器片を粉砕しても同様に自作することができます。

破片が残っていなければ、セラミックパウダーを購入して用意してください。この品は初めからセラミック(陶器)が粉末状になっており、以下の粉砕作業は不要です。

破片をビニール袋に

まず、破片をビニール袋に入れ、玄関土間など固い床面に置いてトンカチやドライバーの尻など固いものでコツンコツンと叩いて細かくします。

たたいた時袋が破れてこぼしてしまわないよう、床と袋の間に紙皿などを置いておきましょう。 

完全な粉にせずとも、粒が0.5㎜程度になっていれば十分です。陶器はもろいので、粉砕にはそれほど力も時間も必要としません。

ちなみに陶芸用のセラミックペーストという商品がありますが、これは窯で焼くことを前提にしており適しません。

食器を組み、パテ補修したい箇所を特定する

欠けた食器をお持ちの場合で、パテ埋め補修したい箇所がすでにはっきり分かっている場合はここの作業は不要です。

食器を組み、パテ補修したい箇所を特定する

100均食器を金継ぎデザインしようと思い、食器を自力で割ろうとしたものの手元がくるってメチャクチャ粉々になってしまった筆者のような方や、割れた食器の修理からやりたい方は、まずはバラバラのピースを仮組みするところから始めます。

どのピースがどこにはまるのか把握し、分かるように並べ直したら小口両面にタイトボンドを塗っていきます(コンタクト接着)。

仮組

接着技法は 安全・簡単格安DIY 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方 を確認し、欠けた箇所を残して補修終了段階まで進めてください。乾燥と洗浄を終え、金継ぎ塗装する手前の段階です。

先に塗布
先にすべての断面小口にタイトボンドを塗り切り、8分まつ(オープンタイム)。あとでパテ埋めする予定の箇所には目印をつけ、塗らないようにする
いっきに組み立てる
塗り切ってから、素手で一気に組み上げる。安全な接着剤なので手袋は不要。素手の方がピースのずれや段差を指で感じられてうまくいく。あとで洗浄できるのではみ出しは気にしなくて良い。
パテを要する箇所以外は先に組み上げる
後でパテで繋げる部分を残し、さらに15分乾燥する(クローズドタイム)

ピースの無い部分やピースが細かすぎる部分はパテつなげて塞ぐので、残しておきます。残す部分には最初の仮組みの時点で、小口に×印を記入しておくなどし、タイトボンドを付けないようにしましょう。付けてしまった場合は、指で拭き取れば良いです。

オープンタイムなど接着の詳細なコツは、冒頭のリンク先よりご確認ください。

安全なパテを調合する

安全なパテを調合する

食器の補修箇所が分かっていれば、補修の穴埋めに必要なパテの量は目分量で分かるはずです。

最初の手順でセラミックパウダーを自作あるいは購入して用意出来たら、タイトボンドと混ぜて必要量のペースト状のパテを作ります。

配合は1:1くらいが適しますが、目分量のおおざっぱで構いません。見た目で、出したボンドの量と混ぜる粉の量が丁度同じくらいになるようにしてください。 

小皿に同量を出し、爪楊枝で混ぜながら調合します。このペーストを後で食器の欠けた部分に盛るわけですから、柔らかすぎると感じたらじぶんで使い易い固さになるまで粉を足して調整しましょう。足しすぎるともろくなるので、あくまで微調整です。

ちなみに余ったペーストは固化する前、だいたい調合から4時間以内くらいなら水で簡単に洗い流せますから、調合小皿はご家庭のしょうゆ皿などでも構いません。

記事の写真はまさにそうしています。安全な材料ですから、洗い流せばそれで済みます。

補修箇所にパテを盛る

補修箇所にパテを盛る

調合出来たら、あなたのオリジナルパテを補修箇所に盛っていきます。混ぜるのに使った爪楊枝ですくい、どんどん盛って行きましょう。ちょっとはみ出しても構いません。

タイトボンドは乾燥すると収縮するので、多少は厚くぷっくりした盛り方でも支障ありません。

盛ったら乾燥
最終乾燥前ならいくらでもあとで洗浄できるので、デロデロになっても気にせず盛る

損傷の大きい箇所や残った破片が小さすぎるために仮組みせず残しておいた箇所も、パテペーストを付けながらじっくり盛って組んでいきます。

小破片が残っていない状態で大きな面積を形成する場合は、パテペーストを何段階かに分けて乾かしながら盛ることでも形成できます。しかし段階盛りは乾燥時間を何回もとるので、面倒かもしれません。

こうしたケースではまったく別の破片を持ってきて埋め込み、つなぎに使うのも一つの手です。大きささえ合えば綺麗なガラス破片や色違いの陶器片でもかまわないどころか、あなたにしか成しえない独創的なデザインにつながる可能性もあります。

埋め込む素材は陶器と近い物性ーーすなわち他の陶器、ガラス、石であれば完成後も引き続きレンジと食洗機が使えるので有利です。

とはいえ物性にこだわらず思い出のかけらやお気に入りの破片を埋め込み、使い方に気を付けるようにするのでもかまいません。大切なのは、あなたが気分よく気に入って使えるものができるかどうかです。

なお金属だけは腐食の恐れがあるため、避けてください。

パテ組み
あまりに小さい破片は盛るとパテに埋まってしまうが、クローズドタイム後に削って表出できるので心配ない

盛ったら15分タイマーして待ちます(クローズドタイム)。15分経ったら、はみ出しを爪で削って除去します。最終的にはゴールドペイントでカバーするので、あまり神経質にこだわらず気になる部分だけ取り除けばよいです。

ジップロックに乾燥材と同封

除去が終わったらジップロックに乾燥材と同封し、2時間ほど乾燥させます。乾燥材は焼きのりの袋などに入っています。なければ、風通しのよい場所に置いて一晩8時間ほど乾かします。

乾かしたらいったん水を入れ、漏水がないかテストしましょう。

漏水した場合は電気スタンドなど手元の照明光源なるべく近くに直接かざして透かし、光の漏れる箇所を探して穴を特定します。

穴を特定したらタイトボンドを爪楊枝ですくってカバーするように塗り埋め、再度乾燥時間をとります。

表面を平滑にする

乾燥したら、今度はセラミックを混ぜていない生のタイトボンドを、パテ盛りした部分の表面に塗っていきます。タイトボンドを適当な小皿に出し、爪楊枝ですくって塗っていきましょう。

この作業は、パテ盛りした部分の表面のデコボコをなくし、滑らかにするために行っています。あとで金色を塗るときの仕上がりにこの手順が効いてきます。

表面に塗り終わったら、再び乾燥材ジップロックに入れるか風通しのよい場所で24時間乾燥させてください。この最終乾燥は極めて重要なため、必ず乾燥時間を十分とってください。乾燥が足りないと、この後の焼成工程でパテが膨張し失敗します。

パテ盛り乾燥終了

最終乾燥が終われば、パテ補修は終了です。

補修箇所を金継ぎする

難しい補修箇所を金継ぎする
筆塗りはけっこう難しい

補修箇所が大きく、面状になっている場合はゴールドペイントを筆で塗って対応します。補修箇所が小さかったり、線形であればゴールドライナーという道具の方が、筆が不要で直接塗れるので楽です。

この記事ではゴールドペイントで筆塗りを実演していますが、実感としてまっすぐな線を引く難易度はゴールドライナーより高く難しいです。初めて金継ぎに取り組む方や、楽に済ませたい方、筆のコストを抑えたい方は、ゴールドライナーの方が適すると思います。

下記の白いカップの写真はゴールドライナーによる筆者の作例なので、仕上がりの違いを参考にしてください。少しラインがぷっくりした風合いになります。

ゴールドライナー作例

ゆくゆく金以外の色を自由に使ったり、広い面に効率良く塗ったり、線の太さを自由に変えたいと思っている人は、ゴールドペイントを練習する価値があるでしょう。

失敗してもこのあとの焼成前なら水を含ませた綿棒などで拭き取って何度もやり直せますから、楽しんで自由に塗ってみましょう。

記事では分かり易く金継ぎを踏襲し金色を選択しましたが、もちろん色はあなたの自由です。

この材料は混色もできますし、メタリックの他の色も沢山ありますから、幻想的なエメラルドグリーンや涼しげなメタリックブルーなどイメージや使途に合わせてアレンジしてみましょう。

オーブン焼成

塗ったら焼成します。安全・簡単格安DIY 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方 の記事を参考に、乾燥工程を念入りに行い熱割れに気を付けて焼いてください。

焼き上がり、扉を閉じたまま2時間待ってからオーブンから取り出せば完成です。

欠けた100均食器もオリジナルに生まれ変わらせてみよう

100均食器破砕前
100均食器破砕後
オーブン不可でも焼成OK

記事ではあえて見るも無残なほど粉々になった食器を持ち出し、直してお見せしました。この食器は100均ダイソーの品物です。オーブン不可品でも冒頭リンク先記事に記載のコツを押さえれば焼成できます。

この状態からでも復元できるのですから、ちょっと欠けた程度の食器なら初めてのあなたでもじゅうぶん簡単に直せるはずです。

とはいえこんな記事を読んでも、もしかしたら今どき割れた食器をわざわざ直して使おうなどという人はいないのかもしれません。

有明カップ

しかし食器を直す伝統技法で100均食器を骨董品のような風合いで、なおかつ完全にあなたのオリジナルで作り変えられるとしたらどうでしょうか。

そして伝統技法のスキルを現代の道具と技術によって、安く習わず身に付けられるとしたら。。?もちろん食品安全性のお墨付きで。

安全・簡単格安DIY 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方 の記事と併用し、ぜひ挑戦してみてください。スキルをお友達に教えてあげたり、和風のグッズとして使ってみたり、独創的なスタバマグなどとして持ち出しても面白いかも知れませんよ。

おまけ 筆者、筆塗りが難しくて道具に頼る

インターロン
インターロンは2号(中太)と長穂(極細)が最適

ゴールドライナーに比べ、筆塗り技術を要するゴールドペイントはきれいな線を引くのに熟練を要します。道具もできれば使い易いものを選ぶことをお勧めします。

線のかたちにこだわる方は塗りと乾燥の後で焼成前に爪かカッターの背を使ってはみ出しを削ると整形できます。これは伝統技法でも同様に行う手順です。

筆者による記事の作例では、ゴールドライナーとゴールドペイントどちらの例でも削り工程は行っていません。写真を仕上がり水準の目安にしてみてください。

有明行灯
インターロンを持ち出せば整形しなくてもそれなりに仕上がる。和風インテリアと相性が良い