3Dプリンタを買うかどうか決める前に、Macで無料3D製図ソフトFusion360を試したいけど、ネットの記事はWindowsメインばっかり。
公式を見ればすぐ分かるような手順ばかりやたら詳しくて、逆につまづく所や迷う選択肢をどうすればいいかは全然ネットに載ってない。
とお思いの方のために、筆者の例を示しご案内したいと思います。
筆者もFusion360を使うのは初めてで、皆さんと同じ、これからの状態です。ですから、やたら詳しい内容や難しい用語は使いません(使えません)。
でも、筆者はブログでMacやiPhone、その他ウェブサービスのトラブル解決や応用記事をたくさん書いて来ました。Macに慣れているし、機械全般の取扱自体は得意なので、むしろ簡単なことばで皆さんのお役に立てると思います。
この記事では初めてのインストールから最初の3Dテストプリントまでをガイドしています。目次より必要な箇所をご覧ください。
Fusion360をMacでダウンロードする
Fusion360のホームページにアクセスし、アカウント作成画面まで進んでください。「無償体験版をダウンロード」>非商用目的>「利用するには」ボタンです。
ここでアカウントを登録する必要があります。偽名でも通りますが、後で分からなくなって困らないよう確実なメモを保管しておく必要が生じます。
また、Eメールアドレスは自分で使える本物が必要です。あとで確認メールが届き、認証する必要があるので。
iCloudキーチェーンは今回は使用しない
パスワードを入力するとき、MacからiCloudキーチェーンの自動生成パスワードを提案されることがありますが、拒否してください。
あとでアプリを起動するときにパスワードを求められるのですが、残念ながらFusion360アプリ上だとキーチェーンが呼び出せずかえって面倒くさくなります。
メールを登録するときのパスワードは、メール自体のものと変える
Fusion360に限らずなんでもそうですが、あなたがネットやスマホ、あるいは手書きでも、アカウントを登録する時、メールアドレスを記入したことはあると思います。
この時記入するパスワードは、メールアドレスとは別のものにしなければなりません。絶対に別のものにする必要があります。別のもので100%通ります。同じにする義務はありません。
例えばあなたのアドレスが、suzuki@gmail.comで、パスワードがsuzuki0623だったとします。
この場合、登録するパスワードはsuzuki0623とは違うものに変え、メモを保管しておきましょう。名前と誕生日の組み合わせは最も推理されやすいので避けた方が良いです。
メール自体のパスワードと同じものにしてしまうと、登録先の会社や人から、あなたのメールの中身が丸見えになってしまいます。
全て入力したら、プライバシーの規約に関する欄をチェックし、「CREATE ACCOUNT」ボタンを押してください。
すると元のホームページに自動で戻り、アカウント登録前に「利用するには」だったボタンが「個人用Fusion360のダウンロード」に変化しているので、クリックするとダウンロードされます。
そのままインストールしてください。ダウンロードした末尾が.dmgのファイルをダブルクリックし、出た子画面のFusion360アイコンを右クリック(トラックパッドは二本指タップ)して「開く」を押せばあとは一本道でできます。
なお、あとでアカウントを登録したメールアドレスに認証メールが届くので、VERIFY EMAIL / Eメール認証 ボタンを押して完了しておいてください。
起動し、初期設定する
インストールしたらLaunchPad(Macの下方にある9色のタイルアイコン)にあるFusion360アイコンから起動してください。
初回は、二段階認証の設定が出ます。どうせ無料の試用なので、後回しでも良いと思います。「REMIND ME LATER / あとで通知する」で後回しにできます。
次に、「チームを作成」的な趣旨のメニューが出ますが、一本道なのでそのまま言いなりに作成し、進んでください。完了するとアプリが起動し、初期画面になります。
初期画面では右上の丸ボタンから「基本設定」をクリックし、「データの収集及び使用」の欄をよく読んで、必要に応じて設定を変えてください。
無料で使わせてくれているソフトなのだから、データの収集には協力したいところですが。。。何が収集されているのかは公式サイトをGoogle翻訳してご確認ください。嫌だったらチェックボックスを外し、オフにすると良いです。
オフライン初期設定
次に、近くにある時計アイコンを押すとオフラインモードへの切り替えができます。
オフラインモードにすると、オンラインでネット上の他の登録した仲間と同じファイルを介した共同作業ができなくなります。
とりあえずオフにしておき、あとで必要になったらオンにすれば良いでしょう。いつでも切り替えられます。
これで、初期設定は終了です。
オフライン設定の注意点
規約により、オフライン状態が2週間以上続くとオンラインにするよう促されることがあります。その際は指示に従い、同じボタンでオンラインにしてつなげ、また後でオフラインに戻せばそれで足ります。
使い慣れて支障ないと感じてきたら、あるいはオンラインにしてみて動作が重くなったなどのトラブルを感じなければ、そのままオンラインにしても、もちろん構いません。
また、オフライン設定にするとファイルの保存手順が少し変わります。「保存」ではなく「エクスポート」を選択し、.f3dファイル形式でパソコン内の好きなフォルダに保存できます。
アクセシビリティの不許可
インストールの過程で以下のように「sh」という謎アプリからアクセシビリティの許可を求められた場合は、とりあえず拒否で良いと思います。
筆者は拒否しましたが今のところ支障ありません。謎なので拒否で良いと思います。
バージョンアップしないススメ
Fusion360に限らず大抵のPCやスマホに言えることですが、不要不急のバージョンアップはしないのが多くの場合正解です。こういう重くて不安定なソフトウェアは、いま上手くいっているなら余計な手出ししないのが、上手に付き合うコツです。
今回インストールも起動も無事にできたなら、次バージョンアップするのは以下いずれか1つ以上の条件を満たした時のみに限定することをお勧めします。
バージョンアップしないと企業からやたら通知が来てうざいのですが、オフして無視しましょう。皆さんもウィンドウズアップデートとかで嫌ほど経験があると思いますが、更新を機に調子が悪くなることはかなりよくあります。
アイコンやボタンの位置を変えられたり、使いもしない変な機能が増えたり、基本、バージョンアップは足し算の更新なので、すればするほどアプリが重くなります。
企業の方も必要だからバージョンアップしているというより、何かポーズでやっているようなところが見受けられます。例えば社内的に、四半期ごとに改善とか成果を上司に報告しないといけなくて、それでくだらん機能をつけたりボタン配置を変えたりとかです。
あなたがそんな事に付き合って、結果パソコンやアプリが調子悪くなったりしてたら損すぎます。なのでバージョンアップとはうまく距離をとるようにしましょう。これはどういうスマホPCアプリにも言える事です。
Fusion360をMacで操作してみる
こういう新しいアプリに取り組む時は、いろいろ操作を試していくうちに、元の状態に戻せなくなって困る、といったことがありがちです。
なので、まずは何があっても最初の状態に戻せるようなリセット方法を知っておくことにしましょう。
そうすれば、失敗を恐れて面倒なマニュアルを読み込まなくても、あれこれ好き勝手自由に試しながら操作をマスターし、やばくなったら安心して元に戻せるようになります。
操作をリセットする方法
図形を描きたいのに、文字が出る。画面を動かしたいのに、線が引けてしまう。こんな風に操作のマウスカーソルが他のツールに変わってしまって困るときは、矢印で選択するだけだった最初の初期状態にいつでも戻せると、落ち着いて把握できます。
操作をリセットする方法は、キーボードの左上にある「esc」キーです。機種によってescキーが無い場合は、あなたが過去に設定を変えていなければ、command⌘(コマンド)+.(ピリオド)キーでESCの代わりになります。
表示をリセットする方法
拡大や縮小のしすぎ、画面外に出てしまった、書いたものがどこに行ったか分からない、表示がおかしくなった、そういう時は、最初の表示位置に戻せると落ち着いて把握できます。
表示位置のリセットは、画面右上にある家のマークをクリックすると実行できます。試しに、画面右上で「前」などと書いてあるサイコロマークをクリックしながらグリグリ動かして表示を回転させたあと、家のマークを押してみてください。初期位置に表示がリセットされることを把握できると思います。
設定をリセットする方法
なんかあちこち触っているうちに、以前あったものがなくなった、以前と同じ操作で同じようにできなくなった、家のマークを押しても戻らなくなった、おかしくなったという状況になることがあります。
そういう時は、設定をリセットして最初からやり直せば落ち着いて把握できます。
設定のリセットは、右上の丸ボタンから基本設定を開き、左下にある「規定に戻す」ボタンを押すとできます。ボタンが白くなっていて押せない時は、適当に他の基本設定を変更すると押せるようになります。
操作がどの辺にあるか適当に把握する
画面にはコックピットみたいにやたらボタンが並んでいますが、こんなのを勉強するのは時間の無駄です。自動車シミュレータみたいに、とりあえずブレーキとアクセルとシフトレバーだけ操作してみればその方が早く楽しくマスターできます。
ブレーキは先程マスターしたリセットです。残りを学習しましょう。
初期画面では、概ねこんな風に操作が分布しているとイメージを掴んでおいてください。以上で勉強は終了です。
やってから考える実践例
早速アプリを起動し、やってみましょう。操作がこんがらがって嫌になったら、最初の方法で何度でもリセットすれば良いです。
まず、絵を描いてみましょう。例としてデフラグライフの頭文字Dを目指して実演します。細かく教科書通りに操作すると面倒臭く時間がかかりすぎ、応用が効かないので、適当にやってつまづきながらじぶんで何でもできるようになる方法を示します。
絵を描く操作から適当にそれっぽいアイコンを選ぶと、「平面を選択」と出ます。画面にオレンジの四角が3つ出ているので、どれかを選ぶとその面が選択され、画面が平面的になりますから、そこで絵を描きます。
画面上で色々クリックしてみると、線がマス目に沿って描けることが分かります。とりあえずまだ曲線はかけませんが、Dっぽく書きました。また、Dの真ん中に穴を開けたいので、絵を描く操作から四角形ぽいアイコンを選んで、真ん中に将来穴を開ける用の四角形を描いてみました。
これを真ん中に穴のある状態で3Dの立体にしたいわけですが、いくらクリックしても新しい線ばかり引けてしまいイライラします。こういう時は操作だけリセットです。escキーを押すと、線引き状態から脱出できました。
とりあえず立体にしたいので、平面より立体的な画面に戻したいですよね。そういう時は表示のリセットです。右上の家のマークを押しましょう。普段は非表示ですがサイコロマークにマウスカーソルを近づけると出現します。
さて、立体が描きたいのに絵を描く操作を見ても、線ばかりで立体ぽいアイコンが見つかりません。よく見ると付近にメニュータブがあるので、それを切り替えてみてください。絵を描く操作のバリエーションを切り替えられます。
立体を作るには、メニュータブの「ソリッド」という文字を選びます。すると、立体ぽいアイコンがいっぱい出てきます。
今やりたいことは、さっき平面的に描いたDの文字を押し出すみたいに立体化することです。それっぽいアイコンを選んでみましょう。失敗しながら色々試してみても勿論良いです。
押し出しっぽいアイコンを選んで、先程のDの絵をクリックしてみると、上向きの矢印が出ます。
いかにもそれっぽいこの矢印をクリックしたまま上の方に引っ張って、立体ができたらいいな〜と思いませんか。やってみましょう。何度でもリセットできますから、教科書のページをめくる間にやってしまった方が早いです。
ニュっと、立体ができました。大きさは自在です。しかも真ん中に穴が空いており、考えるよりやった方が早い結果となりました。
大きさをニョキニョキ動かして決めたら、形状をこれで決定します。物事を後戻りせず決定、固定したい時は、リセットしてはいけません。キーボードにある、エンターキーを押してください。
出来上がった図形を眺めてみましょう。本当にちゃんとチクワみたいな穴が空いているかな?そういう時は、表示の操作です。思う存分グリグリ操作して確認し、こんがらがって面倒臭くなったら家のマークで表示のリセットです。
作品をオフラインで保存する方法
絵を描いたら、保存しておきましょう。Fusion360をMacで使うインストールと初期設定 でオフライン設定にした人は、「保存」ではなく「エクスポート」を使います。
左上のアイコンから、紙の右上が折れ曲がった絵柄のアイコンを押し、「エクスポート」を選択します。
するとメニューが出ますから、「無題」のところに適当なファイル名を書き入れ、ファイル形式を「.f3d(fusion360標準のファイル形式です)」として保存してください。保存先はパソコン内の好きな場所を選べます。
エクスポート保存したデータから再開するには、同じアイコンから「開く」を選んで出たメニューから、左下の「マイコンピュータから開く」をクリックし、保存先のフォルダを探してファイルを選んでください。
Fusion360で.stl変換精度設定
ここまででFusion360を使って.f3dというファイル形式の3Dデータを作る方法を練習しましたが、.f3dデータから光造形3Dプリントするには、ファイルを.stlという形式に変換する必要がまずあります。
この段落では、Macにおける初めての.stlファイル変換操作方法をご紹介していきます。簡単に済ますことも、精度を自分で調整することも、オフラインでもできます。
当サイトでは光造形3Dプリンタを扱う方法について取り扱っています。FDM(熱積層)に関する情報は今のところありません。
ファイル形式と全体の流れを最初に確認する
アプリ名 | ファイル形式 | 目的 |
Fusion360 | .f3d | 3Dデータを作る |
↓ | ↓変換 | |
ChituBox | .stl | 3Dプリント用の足(ラフト)をつける |
↓USBメモリ | ↓変換 | |
3Dプリンター | .ctb | 光造形のためにデータを積層形式にする |
最初にFusion360で3Dデータを.f3d形式で作りましたが、これを.stl形式に変換して出力します。簡単手軽なオンラインのやり方と、自在に精度を設定できるオフラインのやり方があるので、両方紹介します。
なおこの後さらに.ctbへ変換しなくてはいけないのですが、まずは.stl変換までを取り扱います。
七面倒くさいですが、今の業界技術ではまだ手順を飛ばせません。この分野はまだ過渡期にあり、ファイル形式ごと変わったりするので細かく学んでも時間を無駄にする恐れがあります。とにかく全体像の流れ通りに何も考えずやった方が得な場面です。
Fusion360で.f3dから.stlへオンライン変換する方法【簡単】
Fusion360画面で左上メニューから、ファイル>エクスポート と進み、タイプ:プルダウンメニューから.stl形式を選択して右下の青いエクスポートボタンを押すと、オンラインでファイルが自動的に変換され、指定の場所へダウンロード保存されます。
ファイルのオンライン保存をしていない人は、画面中央に表示されている注意表示の中の保存ボタンを押してからトライすれば、オンライン変換されて進めます。特にこだわりなければ、手順はこれで終了です。作った.stlファイルをChituBoxで読み込む手順に進んでください。
Fusion360をオフラインで使いたい人、メッシュの解像度精度を自分で調整したい人は、以降を読み進めてください。
.f3dから.stlへオフライン変換する方法【自由精度】
Fusion360をオフラインで使いたい人は、無料で案内がFusion360にくっついている、MeshMixerというソフトを使ってオフラインで.f3dを.stlに変換できます。
手間ですが、データの変換精度調整が自由にできるメリットがあります。また、パソコンの性能にもよりますが、ネットワークを介するよりかなり高速で変換することができます。
変換精度を高くするとより精緻な造形データを作れますが、データは重くなります。作品によって使い分けたい人に有用です。
筆者は非常に細かい精度が必要な部品を作りたかったのと、単に古い人間でオフライン信仰(通信回線や企業の都合に振り回されない)があるため、こちらの道を選択しました。
MeshMixerをインストールし、初期設定する
Fusion360画面で左上メニューから ファイル>3Dプリント と進み、変換したい3D図形データそのものをクリックして青色に変えてから、右側に出る小ウィンドウで操作します。
対象が複数モデルに分かれている場合は、どれか一つをダブルクリックすると、接するモデル全てがまとめて選択されます。
小ウィンドウ一番下のプリントユーティリティメニューからMeshMixerを選択するとダウンロードとインストールの案内が出るので、全て許可してインストールを進行してください。ここは一本道で、許可しないと進めません。
インストールしたら、以降はオフラインで動作します。MeshMixerアプリを起動すると最初に英語の案内が出ますが後でまとめて設定を変えられるので、同意で良いです。
起動したらMeshMixer画面をクリックしたのち、左上のメニューから ヘルプ>MeshMixerの概要 をクリックし、画面の二つのチェックボックスを任意で外してください。
これは、アップデートの通知機能と、使用データの収集承諾です。外しても機能に支障はありません。オフラインで使うなら、不要な機能です。
これで、MeshMixerのインストールと初期設定は終わりました。早速精度を設定して変換してみましょう。
精度(偏差)を設定する
偏差とは、ざっくり言ってデータの誤差の事です。他にもサーフェス、法線、エッジの最大長さ、密度、解像度、角度や公差などいろんな設定値があるのですが、どれを変えても結果としては最終結果のデータの精度を変えることに相当します。3Dプリンタ界独特の言い回しです。
すごく回りくどい言い回しなのですが、要するに精度の逆が偏差です。最初から精度って言って逆数を表示してくれれば分かりやすいのですが。
偏差を下げると、データの精度が上がり、重くなります。Fusion360では、主に「法線の偏差」という値を設定することで、精度をコントロールしています。
法線の偏差は、小ウィンドウの「リファインメント」プルダウンメニューから「カスタム」を選ぶことで変更できます。初期設定では、「15.000」です。
先程のオンラインだと、大体「18〜19」程度で自動的に変換されています。つまりこちらのオフライン初期設定15のまま変換すると、精度が20%ほど高く、重くなった状態で出力されます。
参考情報 オンライン変換精度比較
初期設定のままオフライン変換すると、簡単なオンライン変換より約20%精度が高く、データは重くなる
作例におけるオンライン変換時のメッシュ三角形数790
オフライン初期設定でメッシュ1004
.stlに変換する
設定が終わったらFusion360の小ウィンドウからOKボタンを押せば、自動的にMeshMixerアプリが起動し結果が表示されます。
良ければ、エクスポートを押して保存してください。ファイル形式はSTLバイナリ形式にしてください。
ASCII形式は重くなるだけなので不要です。何事も基本的に、アナログよりデジタル、ラスターよりベクター、アスキーよりバイナリが、軽くて機械向きの形式だと覚えておくとたまに役立ちます。その代わり、機械向きのファイル形式は人間には読みづらい内容になるとも。
.ctb変換ファイル形式と全体の流れを再度確認する
アプリ名 | ファイル形式 |
Fusion360 | .f3d |
↓ | ↓変換 |
ChituBox | .stl |
↓USBメモリ | ↓変換 |
3Dプリンター | .ctb |
先ほどまででFusion360で3Dデータを.f3d形式で作り、.stl形式に変換して出力しました。
次にChituboxで.stlを読み込み、3Dプリンターが読み込める.ctbという形式にまた変換します。この過程で、ラフトという造形用の支柱を付加します。
作ったラフト付きの.ctbファイルは、USBメモリに入れてから3Dプリンターに読み込ませて使います。
ほとんどの場合でMacとの直結はできず、USBメモリを経由する手間があります。
Elfinなど一部の3Dプリンタは、Wifiで接続できるものもあります。しかしElfinはChituBoxが使えません。
USBメモリ端子を確認しておく
大抵の光造形3Dプリンタは、データの受け渡しがUSB-Aという端子形式です。その場合、3Dプリンタ本体には適合するUSBメモリースティックが付属するはずです。昔ながらの一番でかいUSBです。
つまり、MacBookの場合はUSB-Cポートしかないので、付属のUSBメモリが使えません。
その場合はMacBookで作った.ctbファイルを、会社や自宅のデスクトップパソコンにメールなどで送り、そのデスクトップPCに付属のUSBメモリを挿してからデータを運ぶことで対応できます。
手間に感じる場合は、変換コネクターを噛ませると良いです。コネクターには色々ありますが、MacBookにも直接突き刺す使途を考えると、コンパクトさを犠牲にしてでもショートケーブルタイプが適します。
2コネクタ同時使用時などMacBookに挿した状態での取り回しがよく、また挿したメモリに障害物が当たった時MacBookの端子を傷める確率を下げられます。
ELEGOO MARS 2 付属のUSBメモリはFAT32フォーマット
ちなみに筆者の所持する ELEGOO MARS 2 の場合は、付属するUSBメモリはFAT32フォーマットでした。同じ機種の人は参考にしてください。勿論、そのままMacに挿して使えます。筆者は実際に上記のショートケーブルを噛ませて使っています。
ChituBoxをインストールし、起動する
3Dプリンタの機種によっては、付属のUSBメモリに最初からChituBoxが内蔵されている場合があります。
しかしほとんどの場合、ネットの本家ChituBoxホームページから最新版をダウンロードした方が良いと思います。ネットの最新版にも最初から多くの3Dプリンター機種別プロファイルが同梱されており、USBメモリ内蔵の古いものを無理に使うメリットはありません。
ChituBoxホームページにある「Download Now」をクリックすればダウンロードされます。特にアカウント作成等は必要ありません。タダでもらえます。ダウンロードしたらダブルクリックし、インストールしてください。
インストールするとLaunchPadにアイコンが出現しますが、これをクリックしても起動できません。Finder>アプリケーションにある、CHITUBOX.appアイコンをクリックし開くと起動できます。
なおAppStore経由でないアプリのため初回は注意表示が出ますが、許可する必要があります。
一度起動すれば、以降はLaunchPadからでも起動できるようになります。
謎ツールのインストールはスルーでもOK
起動すると上記画像のようなダイアログが出る場合がありますが、インストールせずキャンセルを選択しても普通にChituBoxは使えます。
インストールしないと毎回出て面倒なのですが、良く分からないものはインストールしないことをお勧めします。ツール自体はAppleのツールですが、必要としているinstall_name_toolが何を目的としたプログラムなのか調べても判然としません。
初期設定する
初回起動時は上記画像のようなダイアログが出ます。バージョンアップの自動確認システムですが、下部チェックボックスを外して白抜きにし、オフにしておくことをお勧めします。
あなたもスマホアプリやウィンドウズアップデートなどで経験があると思いますが、基本的に何でも、よほどセキュリティの問題やメリットがない限りバージョンのアップデートはしない方がトラブルが少なく済みます。
あなたの3Dプリンターを最新機種に買い替えた時など、目的を持って限定的にアップデートを選択するのが適切です。
起動したら早速、設定ボタンを押してウィンドウを開き、左上の長方形に+のマークを押してください。
すると対応する光造形3Dプリンターの機種一覧が出ますから、あなたの機種に合うものを選びましょう。
2021.5.15時点 ChituBoxV1.8.1 対応3Dプリンタ
以下にChituBoxが標準対応している3Dプリンタメーカーリストを記載します。最新機種もかなり早くバージョンアップで対応しているようなので、欲しい3Dプリンタがメーカー対応していれば、まず問題ないでしょう。
- AnyCubic
- CREALITY
- ELEGOO
- EPAX
- Flashforge
- Longer 3D
- Phrozen
- QIDI
- SparkMaker
- Voxelab
- Zortrax
リストにない場合は、手動で設定することもできます。
基本的な設定はこれで終わりです。昔はレジンもプリセットがあったようですが、今はありません。細かい設定は自在に変更できますが、最初は何もいじらないのが最善です。
レジン樹脂のタブを押すと樹脂コストの欄があるので、買ったレジンの1kgあたり価格を入れておくと、作る製品の原価コストが分かって役立ちます。
.stlを読み込み、配列する
今回は、筆者が購入した3Dプリンターの付属USBメモリに入っていた.stlファイルを例にとって行きます。.stlファイルならなんでも良いですが、初めてなら本体のテストも兼ねて、大きすぎずある程度複雑な形状のものが良いでしょう。
左上のフォルダアイコンから、目的の.stlファイルを開きます。今回はこのようなチェスのコマのデータです。
ここからの操作方法はネットにいくらでも情報があるので、今回はあえてこのコマを量産する手順を紹介したいと思います。
量産をシミュレーションしてみる
同じ形状を大量に作る方法を練習しておくと、じぶんの作品を量産して配る時などに便利です。
3Dデータを複製するには、画面上部のコピーボタンを使います。左側の鏡面ボタンを使うと、形状や模様、文字も反転してしまうので、上部のコピーボタンの方が適します。試しにはみ出す限界までどんどん増やしてみました。
はみ出した駒は赤く表示されますが、ちょっとずらせば納まりそうです。そういう時は同じく画面上部にある自動レイアウトボタンを使います。
いくつかオプションがありますが、中央に配置を選択したところ一発で綺麗に納まりました。
配置が枠内に収まったら、ラフト設置の手順に移ります。
ラフト設置
ラフトとは、3Dプリント作品を支える支柱および土台のことです。
光造形3Dプリンタはその仕組み上、作品を浮かせてラフトで支えた状態で出力する必要があります。
そうしないと、作品がプリンタの天板にくっついてしまい、剥がす時苦労したり作品を破損したりする原因になります。
特に意識しなくても、ChituBoxは初期設定で作品が5mm中に浮いた状態になります。Zリフト高さの項目で、この浮かせ寸法は変更できます。
今回のように複数の作品がある場合、いっぺんにまとめてラフトをつけた方が楽です。その場合は、右側のメニューから全て選択のチェックボックスを入れてください。
そうすると全作品が青色になり、全選択状態になります。この状態で、右上のラフトアイコンを押してください。
するとラフト設置画面に切り替わります。今回のように作品の数が多い時は、前処理の計算に時間がかかるので待ちましょう。進捗は画面下部に出ます。
ラフトは細かく設定できますが、最初は初期設定のままで良いです。余程重そうなものを作るときは、太さを太くしておくと良いでしょう。
右下にある、「+床面のみ」を押すと自動でラフトが取り付けられます。
ラフトがはみ出してしまった場合は、赤く表示されます。
こういう時は手動で右下にある削除ボタンを押し、はみ出したラフトをクリックすると赤く変化するので、変化した状態で再度削除ボタンを押すと消去できます。
全部のはみ出しが解消できたら、ラフトの設置は終了です。ビューを回転させて裏面から見るとはみ出しの有無が一目瞭然で確認できます。
右上のタブからもとの画面に戻り、「スライス」を押すと変換が開始され、結果が表示されます。
結果には消費するレジンの量や、最初に設定した単価に基づく価格コスト、作品を造形するのにかかる時間が表示されます。
今回だと造形時間は1h34m37s、1時間34分37秒です。
ちなみにこちらの画像は同じ駒を2個だけ印刷した場合の計算結果ですが、造形時間が全く変わらないことが分かります。
光造形3Dプリンタでは、作品の高さが同じならば面積にかかわらず造形時間は同じになります。
結果が良ければ、「保存」を押して.ctb形式で保存できます。あとはこれをUSBメモリに移して、3Dプリンタに持っていくだけです。お疲れ様でした。
以前は.cbddlpという形式だったようですが、今は選択できません。.ctbの方がファイル容量が小さく済み、結果として印刷の安定性が増すようで、今はこちらが主流のようです。
なお今回は量産練習のためにチェス駒を大量に並べたデータを作りましたが、このデータでテスト印刷するのはやめておきましょう。レジンが勿体無いので。
手を広げず目的を果たそう
今回マスターした方法は、平面図から立体を押し出して作る方法です。もちろん、いきなり立体から作り始めたり、図面を回転やリピートして作るなど無数に方法はあります。
でもそのせいで、画面にはコックピットみたいなボタンがいっぱいです。また教科書を開いて一つ一つ暗記していたら、終わる頃には最初の方法を忘れてしまいます。
疲れた時は、最初に何を作ってみたかったか、思い出してみましょう。家のちょっとしたフックとか、飾りとか、そういう物だったなら、今回マスターした方法で工夫して作れないか考えてみてください。
作れそうな気がしたら、もう勉強はやめて、作っちゃいましょう。行き詰まってから、教科書で調べれば良いのです。完成させてから、コックピットの新しいボタンを試してみることにしても遅くはありません。
あなたにとって一番楽しいと思える方法を、自由に選んで始めましょう。どういう手順を踏んでも、保存データがあればやり直せます。取り返しのつかない失敗は、ありません。
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