会社でスキャンしたPDFの中には、プリンタで印刷するとやたら遅くなって途中のページが飛んだりダブったり出てくるものがあります。PDFファイルの容量が重すぎるのが原因です。
ならばPDFを軽くすれば良いのですが、変な広告付きアプリを入れるのは嫌だし、公式Acrobatにある最適化や圧縮をやっても大して変わらない。Macのプレビューで圧縮するとページサイズ自体も変わってしまう。
何しても焼け石に水で、結局少しずつ分けて印刷して対応した経験はありませんか。Windowsの相手に送ったPDFでそうした苦情が来て、困った経験もあるかもしれません。
でもそこはMacですから、変なアプリを入れなくても標準機能で解決できるようになっています。早速片付けてしまいましょう。この記事の方法には以下の特徴があります。
- スムーズに印刷できる:何十ページあっても最後までスムーズにいつも通り印刷できるように、PDFファイルが直ります
- 無料、アプリ追加不要:Macに最初から入っている標準アプリの無料機能だけ使い、今すぐ完結できます。
- 解像度設定自由:解像度は自分の自由に設定できます。なお記事では推奨する解像度を300dpi(A3以下の用紙に印刷する場合)としていますので、急ぐ方は300で進めてください。
- ファイルサイズが1/4になる:元のファイルサイズや設定した解像度にもよりますが、多くの場合ファイルサイズが約1/4になります。元が12MBなら3MBです。メール添付などに便利です。
MacでPDFの解像度を下げる方法
初期設定
最初だけ初期設定が要ります。一度設定すれば、以降はここに触れる必要はありません。いつでもPDFの解像度を下げて印刷をスムーズにすることができるようになります。
まずLaunchPadにあるApple標準アプリ「ColorSyncユーティリティ」を起動してください。
起動したら上方にある「フィルタ」タブを選択し、「Reduce File Size」の右側にある紙が2枚重なったマークのアイコンをクリックしてください。
すると下方のカスタムフィルタ欄に、「Reduce File Sizeのコピー」というフィルタが生まれます。左端の>をクリックしてプルダウンメニューを表示してください。
フィルタ名は「PDF解像度300」などわかり易く変えてもいいです。間違えて作りすぎたフィルタは、左下のー(マイナス)ボタンを押してから選択すれば削除できます。
プルダウンからさらに「イメージのサンプリング」の左端の>もクリックして、メニューを表示します。
メニューから、「サイズ調整を設定」と「サイズを制限」のチェックボックスを外し、「解像度を設定」のチェックボックスを入れ、希望の解像度を入れてください。単位はppi(dpi)です。イメージの圧縮は変更しなくて良いです。これで初期設定は終了です。
画質はどうなるのか
解像度を下げると、画質は落ちます。
印刷画像は高画質なほど良いに決まってます。しかしそのためにあなたの印刷作業が滞って結局分割したり、メール添付にも読み込みにもサイズが大きすぎて苦労したりしたのでは、頻繁に支払うストレスと得られる価値が割に合ってきません。
でも、画質を落として汚くなったら最悪です。ではどうすればいいか。
それには、世間のみんなが使っていて支障のない平均的な画質がどの程度なのか知り、それを下回らない範囲に画質をそろえ、最適化することが一つの方法です。
平均的な印刷画質は、300dpiを推奨します。この記事に辿り着いた人は、A3以下の用紙に印刷する目的で、とにかくスムーズに印刷できればわずかな画質の差は気にしない状況という人が多いでしょうから、それなら300です。
数ページ印刷してみて、不満なら400など上げてみても良いでしょう。それでも600もあれば十分だと思います。ちなみに、多くのPDFファイルは初期設定で1200dpiです。
解像度について詳しく知りたい方は iPhone写真画像サイズ縮小の最適解像度 送るときや容量確保用 をご覧ください。細かいことは知らなくてもA3書類は最低300dpiと覚えておけば、大抵どうにかなります。
PDFの解像度を下げる実践
初期設定が終わったので、早速PDFの解像度を下げてみましょう。問題のPDFをプレビューで開いてください。通常のMacなら、単にPDFを開くだけでプレビューが起動します。
開いたら左上のメニューから「ファイル」>「書き出す…」を選択してください。「PDFとして書き出す…」はダメです。間違えないよう気をつけてください。
書き出しのダイアログが出たら、「場所」で保存先を指定し、「フォーマット」を「PDF」にしてください。
次に「Quartzフィルタ」を先ほど作ったフィルタ「Reduce File Imageのコピー」にしてください。一番下のプルダウンに隠れています。フィルタ名を変えていた場合は、その変えた名前が出ます。
その他のチェックボックスは全てオフにしてください。以上で設定は終了です。右下の「保存」を押すと、指定した保存場所に元のファイルの解像度縮小版コピーが生まれます。
解像度を確認し、印刷する
結果を急いでいる人は、作った解像度縮小版PDFを今すぐ数ページ印刷してみましょう。すぐに、スムーズになったと気づくはずです。画質が許容範囲なら、このまま印刷を完了させてください。お疲れ様でした。
画質がちょっと不満なら400、話にならないと思ったなら600に設定し直して圧縮すれば、A3印刷ならばそれで大抵の場合解決します。複数のフィルタをあらかじめ作っておき、使い分けても良いでしょう。
ちなみに解像度300としたなら、ファイルサイズは多くの場合、元のサイズの1/4程度になります。多くのPDFファイルは初期設定で解像度1200dpiだからです。
参考:変更前のファイルサイズ
参考:変更後のファイルサイズ
解像度とは
Macの「情報を見る」でPDFファイルを覗くと上記画面のように表示されますが、ここに書いてある解像度はPDF書類画像データの外形サイズを表しており、今回扱ったものとは違います。なので、300とは表示されません。
このファイルだと、1ページの外形サイズがヨコ595ピクセル、タテ841ピクセルという大きさという意味です。ピクセルとは画像を形作るドット点の単位です。普通は「画面サイズ」などと表現する方が多く適切だと思います。
よくパソコン画面なんかだと、1280×1024だとか、テレビなら2Kとか1080pとかそういう値を見たことがあると思いますが、それのことです。画面のデータサイズです。
一方今回操作した「解像度」は、1インチあたりに何ピクセルのドットが詰め込まれているかという、密度を表しています。1200ppiなら1インチ四方に1200粒のドットです。要らないですよね、重いし。それを今回300粒に減らしたというわけです。
オーバースペックな画質を落とし、世間の平均に合わせよう
記事ではMac標準アプリだけを使ってPDFの解像度を落とし、印刷をスムーズに済ませる方法を解説しました。
ネットには画質を落とさず圧縮・印刷する方法が溢れていますが、そんなうまい話で減らせるデータ量はたかが知れており、印刷が滞るほどの状況にあるPDFファイルに対しては焼け石に水です。
圧縮、変換、解像度、ppi、最適化、ポストスクリプト、イメージ出力、、、マニアックな知識よりもまず、解決の方法を試してみましょう。
印刷が首尾良く終わったなら、以下の記事より興味のあるものを覗いてみてください。きっと、今回の知識がより良く分かり、楽しく便利に使えるようになります。
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