この記事を見に来た人の大半は、手持ちの耐熱強化ガラス器具が原因不明で突然割れてしまった経験をしているか、どこかで見聞きして知っているでしょう。
調べても恐怖を煽られるだけで、ぶつけたり急冷に気をつける以外、対策を示されず困っている方が多いのではないかと思います。でも、レンジも熱湯もOKで中身が見えて汚れにくい、便利な耐熱強化ガラス容器は、やっぱり使いたいですよね。
記事では、まず耐熱強化ガラスの爆発について恐怖を晴らすために、「耐熱ガラス」と「強化ガラス」とは異なる物であり、つくりも割れ方も異なること、しかしどちらも崩壊の原因は傷にあることをざっと概観します。
その上で、耐熱強化ガラスに傷をつけてしまわないよう、物質の物理的な硬さ=硬度という指標を使って、具体的にどうすれば傷と割れ・爆発の確率を下げられるのか対策法を解説します。
耐熱強化ガラス食器容器の割れ・爆発 対策法
ガラスが突然割れる現象は、その遠因に表面の傷のあることが大半です。あとで詳しく解説しますが、ガラスの崩壊を防ぐには、この傷を防止することが対策法になります。
傷の防止には、硬度の知識が役立ちます。ぶつけなくても、硬度の違うもの同士は、こすれるだけで傷ついてしまう。壊れやすいガラス容器には、相棒となる器具に硬度の低いものを選ぶことが肝要です。
そうすれば、意識しなくても楽に傷を防ぎ、割れや爆発といった崩壊に対策することができるようになります。
耐熱ガラスと強化ガラスの違い
耐熱ガラスとは、普通のガラスと原料を変えることで、急激な温度変化にも耐えられるようにしたガラスのことです。計量カップなど熱やレンジに耐える薄手のガラス調理器具は、多くが耐熱ガラスです。
強化ガラスの方は、原則として普通のガラスと製法を変えてガラス全体にパワーを蓄えることで、強い衝撃にも耐えられるようにしたガラスのことです。やたら重くて分厚いと感じる容器は、耐熱機能を併せ持った耐熱強化ガラスであることが多いです。
ざっくりイメージで、薄くても材料の違いから熱に強いのが耐熱ガラス。ぶ厚いガラスにパワーを溜め込んでいて衝撃に強いのが強化ガラス。
つまり、割れるのは耐熱ガラスで、爆発するのはパワーを蓄えた強化ガラスの方だけです。両方を兼ね備えた耐熱強化ガラスも爆発します。
実際は爆発というより崩壊に近く、傷を起点として、ある時点でガラス全体に蓄えられたパワーバランスが崩れ、結果として突如ガラス全体が粉々に崩壊します。
ですからネットやテレビで強化ガラス爆発のニュースを見て心配になっても、家にある特殊ガラス道具の全部が全部爆発するとは限りません。多くは単なる耐熱ガラスか普通ガラスです。
傷を起点に温度差で崩壊する
ガラスが突然崩壊する問題は、ガラスに傷と温度差ふたつの弱点が同時に襲いかかってきた時に起こります。
傷は一度つくと二度と取れないのでどんどん増え、そこに急激な温度差が加わると、熱膨張による力が集中して傷が成長し、割れてしまいます。
ですから突然にガラス道具が割れてしまう現象というのは、遠因に傷があってから、急熱急冷をきっかけにしばらくして起きることが大半です。
あなたが気づかないうちに付けてしまった傷が表面にある状態で、例えば食洗機の熱湯にさらすとか、コンロの金具や七輪の炭、オーブン皿に触れていたとか、レンジでチンしすぎた状態で濡れたシンクに置いていたとか、そういう局所的な温度差が生じた時から数十秒後に割れたり爆発したりします。
傷対策=割れ・爆発対策
これで、耐熱や強化ガラスの、突然の割れや爆発を回避するには、すべての遠い原因となっている傷を防げば良いことがわかりました。キッチンツールのほとんどは耐熱仕様なので、傷がなければ通常調理の温度差には耐えるようになっているはずです。
しかし普段の使い方を気をつける以外に、ガラスに傷を付けない方法などあるのでしょうか。その方法は、硬度という物理的な指標の中にあります。以下の物理的なルールをご覧ください。
傷というものはぶつけた時に付くと思いがちですが、実際は硬さの異なる物同士がこすれただけでも付きます。これこそが、あなたがぶつけた覚えがないのに食器がどんどん傷ついて痛んでしまう原因です。
硬いガラスも例外ではなく、より硬度の高い器具にこすれただけで、どんどん傷ついていきます。
素材 | 硬度 | 調理器具例 |
シリコン、ゴム、エラストマー | ー | シリコンへら |
木 | 1 | カトラリー |
プラスチック、爪 | 2 | カトラリー |
金、銀、アルミ、真鍮、銅 | 3 | 高級カトラリー |
メラミン | 4 | 激おち君、最新カトラリー |
一般用ステンレス | 4-5 | カトラリー、調理器具 |
ガラス、耐熱ガラス、強化ガラス | 5 | 食器、容器 |
刃、鋼、合金 | 5 | 包丁、刃物用ステンレス |
研磨剤 | 7 | クレンザー |
硬度について詳しくは出典リンク先をご覧ください。
ガラス類の硬度は5です。これと同等以上のものがこすれると、どう気をつけても無駄で、ガラスに傷が付き、崩壊の原因を作ります。逆に、カトラリーに硬度4以下のものを使えば、こすった程度で傷はつきません。
しかしいちいち木とステンレスの道具を使い分けていたのでは、精神が持ちません。疲れてしまいます。
耐熱強化ガラス食器容器の割れ・爆発 楽な対策法
使い分けが面倒ならば全部硬度の低い木やプラのスプーンに変えてしまえば良いのでしょうか。確かにそれも一案です。
でも耐熱強化ガラスでチンしたグラタンを食べるとき、こびり付いたチーズのお焦げはそんなヤワなさじでは取れません。諦めるのは忍びないですよね。他にも、食洗機が使えないとか汚れやすいとか、木やプラだけでは困る場面が沢山あると思います。
ではどうすれば楽に耐熱強化ガラス食器の割れ・爆発を防げるのか・・・答えはあなたのキッチンの中にあります。いま台所にある、あなたの耐熱や強化ガラス器具が具体的に何なのか、見てみましょう。
計量カップなら、そこにナイフフォークを使うことはありません。箸や、スプーンでしょう。
容器なら、箸やスプーンの他にフォークを使うかも知れません。皿なら、ナイフもあるかも知れませんね。グラスなら、何もカトラリーを使うことはないでしょう。
要するにいつもそのガラス容器を使うときに使用している、お決まりの相棒の側が何だったのか思い出してみてください。例えば筆者宅の場合、コップと容器だけが耐熱強化ガラスだったので、スプーンと箸だけが相棒確率の高いカトラリーでした。
その道具だけを限定して、硬度1の木やプラより十分硬くて、それでいて硬度5のガラスを傷つけない、硬度4の最新カトラリーに揃えてしまうのです。なお、木製の箸など最初から硬度の低いお気に入りが揃っている場合は、もちろん変更不要です。
確かに、気をつけていても食器は普段いろんなものとこすれ合います。しかし普段の暮らしの中で最もぶつかり合い、こすれる機会の多いものは、相棒となるカトラリーや調理器具類です。
ですからそうした器具が、あなたの場合で具体的に何なのかはっきり認識し、それを硬度が低くて、かつ低すぎないものに置き換えてやることが、最も利便性を損なわず効率良く崩壊確率を下げることのできる方法となります。
完璧にやろうとすると強化ガラスなど怖くて使えなくなってしまいます。そうでなくても、ぶつかる頻度の最も高い道具だけを変えてやれば、自然体で対策できて疲れませんし、最悪壊れる時も食事の重要な場面は避けられる結果となるでしょう。
おまけ
ちなみに耐熱強化ガラスは食器だけでなく、電子レンジの扉や、建築物の窓にも使われています。すごいオフィスビルの窓だけでなく、あなたの家の窓にもあるかも知れませんよ。
窓ガラスの下の端っこにうっすら白く刻印があり、パイロクリア / PYROCLEAR とかファイアライト / FIRELITE(耐熱結晶化ガラス)、マイボーカとか書いてあったらそれです。窓とお隣さんの敷地境界が近くて、網目が入っていない場合は耐熱強化になっていますから、あとで見に行ってみましょう。
なお耐熱強化ガラスは網入りガラスに比べずっとコストのかかる上等品です。建築に使う耐熱強化ガラスの強度精度は食器の比ではありません。通常使用で突然崩壊に至る確率はまずなく、飛び石や打撃で壊す心配に注意を払った方が良いでしょう。そしてそれは普通のガラスについても同じことです。
つまり、家の耐熱強化窓については食器と混同して通常以上に心配する必要はありません。網目のない高価で美しい窓を装備していたことを、安心して快適に活用しましょう。
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