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食器と調理器具に傷をつけない無料の方法【素材の硬度一覧】

フライパンのハゲ、陶器の線汚れ。刃のこぼれた包丁。スレ汚れたプラ、黒ずんだ木製食器。落ちない傷汚れのどんどんたまる食器や調理器具たち。なんとかしたいですよね。

でも、どんなに丈夫な道具や強烈な洗剤を用いても、この問題に終わりは来ません。傷も汚れも、いつの間にかすぐにまた付くからです。

誰しも最新コーティングのハゲた道具や、汚れの付き易くなった食器を捨ててきた経験があるでしょう。

食器と調理器具の傷汚れをつけない無料の方法【素材の硬度一覧】

では、終わりが来ない食器類の傷汚れ問題は、どうすることもできないのでしょうか。

いいえ、はじめから食器類に無自覚な傷汚れをつけないよう、簡単無料で傷を予防できる硬度の知識を身につければ良いのです。

食器の傷汚れ対策は、硬度(ものの硬さの違い)を知り、傷つきにくい道具の組み合わせ方を知ることが大切です。それさえあれば、まるでプロのシェフや旅のブラックスミスになったような気分で、良い道具を長持ちするよう使いこなせます。

ブラックスミス

何も買い足さず今ある道具を使いこなすことも、買った良い食器や洗剤をより的確に活かすことも、自信を持って憧れの調理器具を手に取ることも、できるようになるでしょう。

主に建築材料の強度を通して素材の硬度を幅広く知り、扱う立場にある建築士の筆者よりお届けします。ご覧ください。

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落ちない汚れの原因は傷

落ちない汚れは傷にたまる

木へらやプラまな板など柔らかい道具が段々汚れやすくなるのは、使うにつれて付いたすり傷に、汚れが溜まりやすくなるからというのは、誰でも経験から分かっていると思います。

でも実は、硬い陶磁器やホーローにつく線汚れの多くも、傷に起因しています。このような汚れをメタルマークといい、落とすのに酸が要ります。

そしてもちろん、フライパンのテフロンハゲや包丁の刃こぼれも、傷そのものが原因で起きる劣化です。

傷

食器調理器具にまつわる汚れや劣化の悩みの大元は、全て共通しています。

些細な、それでいてどんどんたまる、から生まれてくるのです。つけた覚えのないこの傷の原因を、ちょっとだけ見てみることにしましょう。

物同士がこすれると、柔らかい方だけが傷つく

木やプラは柔らかいから、硬い物とこすれた時傷つきやすい。逆に陶器やステンレスは硬いから傷つきにくい。これは当たり前に分かると思います。

では、陶器とステンレスのように硬いもの同士がこすれたら、どうなると思いますか・・・?

物同士がこすれると、柔らかい方だけが傷つく

物とは、じぶんよりも硬いものにこすれた時、初めてじぶんの側が傷つくのです。この硬さ、傷つき易さの指標を、モース硬度といいます。モース硬度は10段階で表され、最も硬いものはダイヤモンドで、硬度10です。

そして概ね、木はモース硬度1、プラは2、ステンレスは4、陶器が5です。

モース硬度

ちょっと何言ってるか良く分からなかったかもしれませんが、陶器は、ステンレスより硬いのです。

金属が陶器に擦れると、陶器より柔らかい金属の方が傷ついて陶器に銀色の線を残し、やがて酸化して薄黒くメタルマークとして残るという歴然とした事実があります。

ですから道具を傷めず長持ちさせるには、物の硬さについて感覚的な思い込みを捨て、正しい硬度の知識を身に付ける事が何より大切な最初の一歩になります。

傷の原因は硬度の違いにある

硬い物と柔らかいものがこすれると、柔らかいものの方だけが削れる。硬度のルールを理解すると、キッチンのいろんなの犯人が全て分かるようになります。

傷の原因は硬度の違いにある

ステンレスのシンクに包丁をぶつけた覚えなんて無いのに、なんですぐスリ傷だらけになったのかも、もう分かりますよね。より硬い陶磁器の洗い物をする時こすれまくったからです。

フライパンのコーティング(硬度2)がすぐダメになるのは、ステンレスのオタマでガシガシやったからです。

子供に使わせたプラ食器が汚くなるのは、乳歯(硬度4)でかじるからです。言い換えれば、子供の歯が欠けないのは、プラ食器が負けて傷ついてくれるからです。

激おち君で汚れが取れるのは、スポンジを構成するメラミン(硬度4)が多くの汚れより硬いからです。

メラミン

そう、硬度が分かれば、どこに何を使えば良いか/いけないか自分で分かる。硬さの異なる道具をどう組み合わせて使えば、大切な道具や身体を傷付けず長持ちさせられるか、ぜんぶ分かるようになります。

食器と調理器具、素材の硬度一覧

ものの硬さ=「硬度」の理解に、何も難しい計算や理論はありません。下記の表と2つのルールをご覧ください。

読者の便利のために、食器や調理器具だけでなくキッチンや食卓で身近な素材や人体の一部も、換算し組み込んであります。

素材モース換算硬度調理器具例、細分類補足
食品、シリコン、ゴム、革、布、指ケース、エラストマー
1漆器、まな板
プラスチックテフロン2まな板、ナイロン、フッ素コート
大理石3キッチン天板、マーブル
アルミ真鍮3高級カトラリー
チタンステンレス4スキレット、食洗機カゴ、ざる
18-8SUS304オーステナイト、
18-0SUS430フェライト
4乳歯、歯の基部、カルシウム
メラミン4激おち君、最新カトラリー
ガラスホーロー5コップ、鍋、釉薬
合金5包丁、クロモリ、
焼入鋼、マルテンサイト、
積層鍛造鋼、ダマスカス
SUS630析出硬化型
陶器5
6永久歯の表面、エナメル
御影石6キッチン天板
粉末高速鋼合金鋼6プロ用包丁、ハイス鋼、
SUS420
磁器タイルセラミック水晶7皿、キッチン天板
研磨剤7石英、クレンザー、シリカ
超硬合金8ナイフ、炭化タングステン
ファインセラミック9包丁、ジルコニア、アルミナ
ダイヤモンド10砥石
スレート(黒い石まな板)は調査分析中です。推定、3です
傷と硬度のルール
  • 硬度の高い物と低いものがこすれると、低い方のものだけが傷つく
  • 硬度が同じもの同士がこすれると、双方が削れる

硬度の単位規格は無数にあります。ここでは比較のために鉱物や建築石材における傷つきにくさの尺度であるモース硬度に、その他の物質の硬度を換算した値をまとめました。

数値は分かり易いよう大雑把に丸めてあります。細かく知りたい方は各リンク先をご覧ください。

金属は、金属同士の差をビッカース硬度HVで相対的に並べています。左端の金が最も低く2.5相当、右端の銅が3相当で、右へ行くほど概ね硬いです。

金属とセラミックは配合や組成によって硬度が特に幅広くありますが、キッチン用品でメジャーなものだけ抜粋し、セラミックはロックウェル硬度HRCを換算し表示しています。

なおブリネル、ヌープ、ショア、デュロメータそしてマルテンス硬度は、ここでは扱いません。換算できるだけの情報が少なすぎたためです。

硬度を組み合わせれば、傷を予防できる

硬度のルールを理解し、一覧表を見れば、大切な道具を傷付けず長持ちさせる方法に説明はもういらないと思いますが、例をいくつか挙げてみます。

硬度を組み替えれば、傷を予防できる

いろんなことが無数に言えますが、例えばティファールフライパンのテフロン(硬度2)を長持ちさせたいならば、ヘラや箸だけでなくオタマやトングも、木製(硬度1)を探してきて使う価値があります。

韓国料理で鉄箸(硬度4)を使いたいなら、皿は石(硬度6)か鉄(硬度4)にしなければなりません。

激おち君(硬度4)で汚れたプラコップ(硬度2)や、焦げ付いたフッ素コートフライパン(硬度2)をゴシゴシ拭いてしまったらダメです。歯の基部(硬度4)もダメ。

木のスプーン(硬度1)にしたのに磁器(硬度6)にメタルマークがつきまくるのは、食洗機のステンレス棒(硬度4)に当たっているからです。

問題解決

こんな風に、傷汚れの問題解決を図るとき、硬度が分かれば犯人が何なのかすぐ分かるようになります。食器を乱暴に扱うなと家族に怒る代わりに、適切な道具を与えて問題を解決できます。

もちろん食器や調理器具だけでなく、あなたの大切な家具や車、楽器など傷つけたくないもの全てを扱う時に、硬度の一覧表は役立ちます。

とはいえ暮らしの中で最も傷つく確率が高いものは、互いにこすれ合う場面が最も多い物、すなわち、食器と調理器具です。まずはここから考えてみましょう。

利き手に持つ道具を柔らかくし、受け手を硬くすれば傷つかない

硬度の組み合わせを細かく考える代わりに、ざっくりイメージでまとめる方法もあります。

利き手に持って振るう道具を柔らかく、受け手に持つ器を軽く硬く、それらを載せる調理の置き台を重く硬くすれば、ジャンケンみたいに互いに相性良く傷つきにくくなります。

利き手に持つ道具を柔らかくし、受け手を硬くすれば傷つかない

カトラリー、ヘラ、お玉など利き手に持つ道具は、ある程度で捨てるかエイジングを視野に硬度の低い道具に揃えていけば、相手を傷つける心配なく思う存分腕を振るえるようになります。

茶碗、鍋、フライパンなど利き手の逆側に持つ道具は、重さや汚れにくさの許す範囲で硬度の高い道具に揃えていけば、意識しなくても傷つかず長持ちします。

大皿やキッチン天板など、手に持たない道具は軽さより硬さ優先が有利です。

まな板も手に持ちませんが、しかし刃より硬くなってはいけません。

硬い汚れより硬度の高い道具を使えば落とせるが

硬い汚れより硬度の高い道具を使えば落とせる

ちなみに、ステンレスシンクや蛇口、便器、ユニットバスの垂直面で、うっすら白っぽい垂れたようなしつこい汚れが残るのを目にしたことがあると思いますが、その多くはカルシウム(硬度4)かシリカ(硬度7)です。

カルシウムは激おち君(硬度4)で落とせます。シリカは硬度7あるので、クレンザー(硬度7)を使えば落とせますが、ユニットバスの化粧鋼板(硬度4)も蛇口の鏡面ステンレス(硬度4)も微細な傷だらけになり、表面がハゲてしまうと分かります。

つまり、シリカ汚れはこすって落とそうと頑張ること自体が間違いだと分かります。というかクレンザー自体、どんな汚れもこすって落とせるポテンシャルがあり、しかし目に見えないほど微細な粒子傷によって、どんな道具も傷めてしまうと分かります。

じぶんの付けた傷あとからのみ、自分ベストの道具を読み取れる

記事では硬度の知識を一覧表で理解し、ルールをスキルとして使うことで、食器や調理器具を傷つけず長持ちさせる方法を紹介しました。

じぶんの付けた傷あとからのみ、自分ベストの道具を読み取れる

さっそく台所へ行って、あなたの道具たちを見直してみましょう。丈夫な金属に買い換えるため捨てようと思っていた薄汚い木の道具は、自身が傷つくことでフライパンと食器を守っていたかもしれません。

もろく弱いと思っていた陶器やガラスたちには、金属を打ち負かし傷つける力があります。

硬さの同じ物同士はこすれ合うだけで双方が削れるのだから、米とぎには何の力を込めることも、常時水に浸けながら研ぐ必要も無かったと分かります。実際、精米はそのようにしてただかき混ぜられ、水の代わりに風ですすいで行われています。

硬度のスキル

他にもあなたのキッチンや道具にある傷跡のひとつひとつを硬度の一覧表で見直してみましょう。あなた自身の付けた傷あとこそが、あなたと家族それぞれに相応しい道具を選ぶためのヒントを与えてくれます。

あなたにぴったりの、オリジナルな暮らしのアイデアが、ふさわしい個性的な道具が、たくさん見つかり選び取れるようになることでしょう。

おまけ:うっかり割ってしまった時は

こすれ傷汚れが増えないよう普段から気をつけていても、何かの拍子にうっかり食器を壊してしまうことはままあることです。

そういう時は、下記をご覧ください。割れても直せる自信がつけば、良い食器を使うことにためらいがなくなり、粗忽な家族や子供に怒らなくて済むようになります。