筆者はここ3ヶ月でWinノート、Winタブレット、iPad、Macbookと結果的に全てを使ってリモートデスクトップによるテレワークを試しました。
ここではテレワーク実体験を通して分かった各端末の核心的なリモートデスクトップアプリ対応状況の違いに触れ、はっきり現状を述べたいと思っています。ご参考ください。
革命的な水準に達したリモートデスクトップと対応状況
いかにスペックとデザインが優れていても、仕事に使うアプリが動かなければ意味がありません。
リモートデスクトップとは、パソコンを遠隔操作するアプリです。聞くだけで面倒臭そう、危なそうと思ってしまうような人ですら、どんなものか取り合えず手持ちのパソコンで試しておくべき価値があるほど便利なものです。無料なのでなおさら試す価値があります。
リモートデスクトップが成立すると、価値観の革命的な逆転が起きます。
モバイル端末選びにおいて細かいスペック差やOSメリットデメリットの重要度が下がり、通信性能とバッテリー、そしてリモートデスクトップアプリ対応状況こそが最重要価値になってきます。
とはいえ高速なギガ無限環境を揃えるのが難しかったり、会社のセキュリティ上無理という人の方が大多数でしょうから、ここではこれ以上掘り下げません。。。
自己責任で試す分には、考えるよりやってみた方が早いと思います。会社のPCにChromeリモートデスクトップをインストールして設定し、その後MacBookないしiPadにもリモートデスクトップをインストールして接続や操作性を試すと良いでしょう。
あまり良いことではないですが、筆者は買う前に操作性含めどうしてもテストしておきたかったので、電気屋のMacにこっそりインストールして試し、勿論その後アンインストールして立ち去りました。内緒です
すでに Chrome Remote Desktop ないしMicrosoft リモートデスクトップのいずれかを使おうと検討している方のために、端末のリモートデスクトップ対応状況について実証結果のみご報告します。
2020.11現在の対応状況 | Chrome Remote Desktop | Microsoft リモートデスクトップ |
MacBook | 〇 | ※〇 |
iPad | △ | ※〇 |
Surface (Windowsノート) | 〇 | ※〇 |
Chrome Remote Desktopに必要となる通信速度ですが、筆者の試したところmineoなどMVNOだと遅すぎてもたつきました。仕事には無理です。
MNOの楽天モバイルによる楽天アンリミットでは超快適でした。計測すると7Mbpsだったので、目安にしてください。
なおこれは2.4GHzとした場合の値です。5GHzの時は13Mbps程度出ました。5GHzに対応しているか否かは、お持ちの機器によります。
筆者はrakuten miniを1円キャンペーンの時もらったので、それをテザリング専用機として家に据え置き、ルーターあるいはポケットWiFiがわりに使ってます。rakuten miniは2.4と5GHzの切り替えが出来ます。詳しくは下記参照ください。
楽天モバイルちなみに大手MNOであるソフトバンクは22Mbpsありました。同じく超快適ですがオーバースペックです。
まあエリアによるのでMVNO(mineo・IIJmioなど)とMNO(ドコモ・au・ソフトバンク・楽天)の違いの参考程度にみてください。
2021.1月に試した日本通信の合理的プランだと13Mbpsくらいでした。速度的にはいけます。ただ丸一日リモートすると5GBくらい食うので、ハードユースにはギガが足りません。
MacBook2020M1のリモートデスクトップ対応状況
MacBookは2020M1チップ搭載端末で実験しました。AirでもProでもいけます。
厳密にはアプリ版は特殊キー(Ctrlなど)が使えないのですが、ブラウザ版を使うことで遜色なく特殊キーも通りました。
最新のMacBookAir 2020 M1 で試したところ、Windowsアプリ版と異なり特殊キーの設定チェックボックスが出ないのですが、実際は有効でした。
CtrlもAltもShiftも、EscもFnによるファンクションキー列も全部有効でした。複数キー同時押しも有効に認識します。
Ctrlを押しながらトラックパッドを二本指スクロールあるいはマウススクロールするときの、拡大縮小も有効です。ほぼすべて通ります。
iPad第8世代、iPadAir第4世代のリモートデスクトップ対応状況
iPadは無印第8世代、Air第4世代、Proどれでも状況は同じです。
アプリインストールして、画面タッチでもMagicKeyboardでも有効に使えるのですが、特殊キーが一切使えません。その他の機能も制限されます。
仕事に使おうとするなら、ここを妥協してはいけません。片手のコピペも、拡大縮小も、Escも、Alt+Tabも全てが使えないという事がどれほどマズイか、プライベートだと分かりませんが仕事で使うと痛烈に全部自分に返ってきます。
ちょっと操作がひと手間増えるとかそういうダメージではありません。打ち合わせや会議の場で、素早く情報を引き出したり、拡大してあげたり、いつもの操作手順をやって見せたり、そういうことがすごくもたつくようになります。
筆者は、ノートパソコンよりiPadの方がずっと操作性に優れており、すばらしい設計思想を持ったOSとデバイスだと思っており、未来の主流となる本命と期待していました。今もそう思っています。
実際、端末は期待以上の水準に達しています。それでもリモートデスクトップがこの状況である以上、断腸の思いで今は慎重にみるべきと思います。
SurfaceなどWindowsノート、タブレット全般のリモートデスクトップ対応状況
Surfaceは全てOKです。というかWindowsノート、タブレットなら全部同じ対応状況になります。何の支障もなくすべてが使えます。
Microsoftのリモートデスクトップ対応状況 iPadの特殊キーも使える
Microsoftのリモートデスクトップなら、iPadでも特殊キーが使えます。
しかしこのアプリは設定にハードルがあります。Microsoftリモートデスクトップの場合、会社のPCだけでなく会社ルーターのアドレスを設定するか、VPNを設定する作業が追加で必要になります。
この設定は一人でできる物ではありません。会社のネットワーク担当なり総務なりに固有の設定値を問い合わせないと進めない場面に必ずぶつかります。
インターネット接続と電力コントロールの決定的な違い
重さ大きさ頑丈さに目が行きがちですが、いくら数センチ数グラムの差にこだわっても、バッテリーがすぐ切れるようでは重い充電器と面倒でかさばる有線運用が常態化してしまいます。
2020.11現在の対応状況 | 通信環境と電力のコントロール | 公称持続時間とバッテリー容量 |
MacBook | 〇Instant Hotspot | 18時間(49.9Wh)【Air2020M1】 |
iPad | 〇LTE | 10時間(32.4Wh)【Air第4世代】 |
Surface | △Wifi | 10.5時間(43Wh)【Pro7】 |
とはいえ公称持続時間とバッテリー容量はメーカーが決めて発表するので、私たち個人にはどうすることもできません。いつも公称持続時間と実態とは乖離するものです。
注目すべきは、通信環境と電力のコントロールがどういう方式になっているかです。
電力を大きく食い、かつ、端末ごとに違いが出てくるのはWifiなどネットワーク通信の方式です。CPUも食いますがそれは私たちにどうこうできません。アプリも食いますがそれはどの端末でも大差ありません。
MacBook2020M1の通信環境と電力のコントロール
MacBookはAirでもProでも、Wifi通信でインターネット接続します。LTEは積めません。
Wifi常時接続は端末が発熱するレベルで電力を激しく食います。Wifiテザリングは接続手間のほかに、テザリングする両方の端末で常時Wifiを繋ぐことになるので両方の端末が同時に大きくバッテリーを消耗していきます。
しかし、あなたがiPhoneを持っているなら、Instant Hotspotという機能を設定しておくことですべて改善できます。
設定した場合、あなたがMacBookを開くと、コントロールセンターにあなたのiPhoneが表示されます。(表示は電力消費の小さいBluetoothでなされます。このとき、普段iPhone側はWifiスリープでかまいません)
表示をタップするとiPhoneのWifiが自動ONになり、自動的にテザリングされます。
MacBookから同様の手順で接続解除すると、iPhone側のテザリングもWifiも自動でスリープに戻ります。
iPad第8世代、iPadAir第4世代の通信環境と電力のコントロール
iPadセルラー(携帯のSIMカード)モデルなら、iPadが自分でインターネット通信できるようになります。
Wifiの接続手間も電力消費もありません。能力だけなら理想的なものです。
ただし、セルラー対応オプションで端末初期費用が約15000円かかり、通信会社に対して毎月の費用も発生します。
とはいえ仕事で使うならセルラーを選択し、支払う費用に見合う価値はあります。接続の安定性とバッテリーの持続時間がもたらされ、機械への心配がなくなり仕事にスマートに集中できます。
ちなみにiPadでもInstant Hotspotが使えるので、そういう選択肢もあります。
SurfaceなどWindowsノート、タブレット全般の通信環境と電力のコントロール
テザリングをやったことのある人なら良く分かると思いますが、都度双方の端末をオンにし、接続操作し、両方の電力を食いながら発熱した端末を使う旧泰然としたあの手間があります。
両方の電池残量を常に気にかけ、それぞれに充電ケーブルを頻繁に挿す頻度が上がります。
繋げっぱなしにすれば接続手間がなくなりますが、ホッカイロみたいになって電池がすぐ切れます。
頻繁に発熱し、充電を要するという事は単に手間なだけでなくバッテリーの寿命を縮めます。
幅広い操作性の持つ意味
キーボードとトラックパッドがあり、マウスをつなげて、画面タッチやペンも使えたとしても、あなたの手は2本しかありません。
いろんな操作方法ができることは選択肢であって、操作性の価値そのものではありません。
仕事という限られた時間の中では、豊富な選択肢よりも操作に無駄のないことがより意味を持ちます。
2020.11現在の対応状況 | キーボード | トラックパッド | 画面タッチとペン |
MacBook | 〇 | 〇 | × |
iPad 【+Magic Keyboard】 | 〇 | 〇 | 〇 |
Surface 【Pro7+専用タイプカバー】 | 〇※角度をつけられる | 〇 | 〇 |
操作性を検討する上で核心的に重要なのは、使う時あなたの手の位置を動かさずに済むよう考えて端末を選ぶことです。
キーボードをよく使う目的があるなら、キーボードのホームポジションから手を離さずに操作を完結できるトラックパッドがあるとかなりスマートになります。
それさえできれば、モバイル環境においては、画面タッチやマウスの優先順位は思ったよりずっと低かったと、きっと使い慣れていくにつれ気づくはずです。慣れればトラックパッドがあって本当によかったとも実感できるでしょう。
一方、端末をいつも直接手に持って使うことが多いなら、手の位置は常に画面にあるわけですから、タッチパネルが必須で重要になります。他のオプションは後回しで揃えることにしても、意外と不足はないばかりか、かえって軽くてスマートになったと気づくでしょう。
その他の注意点
iPadはまだ発展途上の段階にあり、ChromeRemoteDesktopの特殊キー以外にもいくつか代表的なテレワーク系アプリの機能に制限があるため、参考に把握しておきましょう。
重要な点として、エクセルのマクロが動作しません。仕事でエクセルのマクロが必要ならば、まだiPadの選択は時期尚早です。
他には、Swiftが動作しません。プログラミングに挑戦したいと思っているなら、Macbookが適します。
買う前に視野を広げ、手持ちでテストしよう
記事では実際にテレワークした人間にしかわからない、核心的価値がなにかご紹介しました。
2020.11現在の対応状況 | リモートデスクトップ | 電力コントロール | 操作の選択肢 |
MacBook | 〇 | 〇 | × |
iPad 【+Magic Keyboard】 | △ | 〇 | 〇 |
Surface 【Pro7】 | 〇 | △ | 〇 |
その端末ごとの違いを上記の表にまとめました。願わくば全て〇の端末があってほしかったですが、それは叶わないという結果です。
また、待っていてもそういう端末はまだしばらく出てこないものと予想します。予想について詳しくは記事末尾の付録をご覧ください。
よって、以下のように結論します。
- ウインドウズからでもいいから手持ちの端末でリモートデスクトップを試す。
- iPhoneを所持しているなら、リモートデスクトップが使えたら、通信環境を整え、費用を出し、M1のMacBookから選択する。会社がウィンドウズでも構わない。
- iPhoneを所持していなくても、リモートデスクトップが使えたら、通信環境を整え、費用を出し、Surfaceの定番からPCと専用タイプカバーを検討しておく。
- リモートデスクトップが使えなかったら、会社のパソコンと同じOSであるものを選ぶ。同じアプリを使えないと詰むため。
Macでリモートワークできるか心配だった人へ最終確認のお役に立てたなら幸いです。
なおMacBookAirの最新2020M1ラインナップ詳細は MacBookAir2020M1 7コア8コア比較検証 をご参考ください。
iPadを迷っていた方は会社と同じヘビーユースにはまだ足りないと思います。ライトユースで良いなら素晴らしい端末です。
ライトユースのベストを求めて無印iPadとMacBookProも把握しておきたい方は、 新しいiPadAir第4世代とMacBookAirM1比較 操作性検証 もご覧ください。
おまけ:今後の端末動向予想
MacBookが画面タッチに対応する可能性ですが、これには第二者利害が無いので十分ありえると思います。OSを対応させることも、端末を対応させることも、Apple自身だけでできます。
当のAppleには設計思想上そんな意思はなさそうですが、進化したiPadと互いに近づいてきているので、どこかのタイミングで融合するような形で実現するかもしれません。とはいえ数年かかるでしょう。
つぎにiPadのリモートデスクトップが特殊キーに対応する可能性ですが、これはグーグルの匙加減次第です。あるいはiPadOSに技術的障壁があり、グーグルにどうすることもできないのかもしれません。
前者なら、グーグルがAppleのために頑張る動機が必要です。互いに第二者利害が絡んでいるので、きっかけが無いと当分動かないと思います。後者なら、Appleの設計思想でブロックしていることになります。
つぎにSurfaceがInstant Hotspotに対応する可能性ですが、これはほぼゼロと思います。AppleがMicrosoftのためにiPhoneとSurfaceを繋ぎやすくすると優位性が失われます。
また逆にMicrosoftはiPhoneにまさるスマホを作ることができていないので、自前で同様の仕組みを用意できません。
最後にSurfaceがLTEに対応する可能性ですが、これはすでにあります。ただし売れ筋ラインのPro7ではなく、GoやX系に限られます。
しかしノートパソコンに毎月の費用をかけLTEを積みたがる需要はまだありません。あってもリモートデスクトップの利便性を実用している一握りの人間だけです。
また、今後も会社組織全般はリモートデスクトップの対応に消極的でしょうから、当分需要は増えません。
よって一番良い定番マシンがLTEを積んでくれるまでにはまだ時間がかかると思われます。
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