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最強魔法瓶DIYと市販水筒の公式保温時間比較検証

魔法瓶水筒の保温力(保冷力)比較実験や保温トリビアはネットにたくさんありますが、条件や環境がバラバラなので参考にしづらい部分があります。

もっと定量的で、確実に保温能力を比較できる検証はないのか?その単純にして唯一最強の結論とは?

記事では日本の国家規格 JISによって完全に条件を統一した実験結果による、公式保温効力のみを比較し、まず、市販品の中から単純最強保温力と、コスパを考慮した現実的なベストバイを選出しています。

さらに、選出した最強の秘密を解析し、巷にあふれる保温の都市伝説と物理的原理を検証した上で、保温力を自力で最強化するための合理的な手法を手引きしています。

水筒に高度な性能を求める登山家や旅人、アウトドア好きのあなたのみならず、この記事には、忙しい出勤前の朝1分を争うすべての働く人や、魔法瓶を哺乳ミルク作りに役立てようとここへ来た、保護者のあなたにも参考にできる知見が含まれています。ご覧ください。

この記事を著作する専門家

一級建築士

この記事は、建築設計を通して熱伝導、対流、輻射の物理的性質を熟知する、設計士の筆者 デフラグライフよりお届けします。

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公式保温力最強の市販魔法瓶水筒

まず単純に一般入手しやすい製品の範囲内で、JIS規格に沿ってお湯投入6時間後の保温効力が試験され、定量的な結果が公式に担保されている品物の中では、コップ式/サーモス がベストです。

試験基準の詳細は記事後半で解説しています。

公式リンクJIS6時間
保温効力
Amazon
参考価格
保温
コスパ
食洗機内容量重量外形
ffx501コップ式
サーモス
FFX-501
77℃4,400円440パッキン
のみ可
500ml280g7×7×
23.5cm
コップ式
タイガー
MSC-C050
74℃2,434円347不可500ml360g6.8×6.8×
23.8cm
コップ式
象印
SV-GR50
76℃2,241円249不可500ml270g7×7×
22.5cm
スクリュー式
サーモス
JOG-500
68℃1,927円1927パッキン
のみ可
500ml210g6.5×6.5×
21.5cm
スクリュー式
タイガー
MMZ-K050
74℃2,241円320不可500ml190g6.6×6.6×
21.6cm
スクリュー式
象印
SM-ZA48
71℃2,287円571不可
パッキン
一体型
480ml230g6.5×6.5×
21.5cm
プッシュ式
サーモス
JNL-505
68℃2,177円2177パッキン
のみ可
500ml210g6.5×7.5×
22cm
プッシュ式
タイガー
MMJ-A482
67℃1,891円N/A不可480ml190g6.6×7.2×
21.8cm
プッシュ式
象印
SM-SF48
71℃2,434円608不可480ml205g6.5×7×
22cm
代表メーカーと品番は2022.2月Amazonランキング上位より選出。極力500ml付近で人気の品とした。
Amazon参考価格はセール時を除く当時の価格。商品画像は各リンク先公式サイトより引用

現在主流の魔法瓶水筒は、その注ぎ口形状ごとに大きく分けて「コップ式」「スクリュー式」「プッシュ式」の3つに大別されますが、傾向として保温能力が最も高いのは、メーカーを問わず「コップ式」のものになります。次いで「スクリュー式」が優れます。

魔法瓶は注ぎ口の部分が最も保温にとって弱点になるわけですが、コップ式は他の方式に比べ厚いコップで弱点を覆うことができるので、物理的自動的に、保温能力が高まる道理です。

このことは要するに、究極の保温能力を求めると、飲み口はコップ式になる、という制約の有ることを意味しています。この制約は記事後半のDIYによって解消できます。

保温コスパ最強の魔法瓶水筒

2021年12月現在、保温性能のコスパが最強と呼べる魔法瓶水筒は、コップ式/象印 です。保温トップのコップ式/サーモスに比べその保温効力が76℃と、1℃しか劣らないにも関わらず、価格は半額です。

次点は スクリュー式/タイガー で、保温効力は74℃に落ちますが、前2者より約90g軽いという、特筆すべき資質を備えます。

保温コスパは、今回最下位の プッシュ式/タイガー 67℃ を基準に、そこからJIS基準で公式に検証された保温効力を1℃獲得するごとに何円のコストがかかっているかを割り戻した値で、低いほど安く、良いコストパフォーマンスであることを示しています。

飲み口形状の違いに関する解説

コップ式注ぎ口 出典:象印

先ほど魔法瓶水筒には「コップ式」「スクリュー式」「プッシュ式」3つの飲み口形式が主流であると説明しましたが、どのメーカーでもコップ式は価格が高くなる傾向です。

スクリュー式注ぎ口 出典:タイガー

スクリュー式は単にひねってフタを開けるといきなり注ぎ口が露出する単純な方式です。

プッシュ式注ぎ口 出典:象印

プッシュ式は、プッシュボタンを押すとポンとフタが開いて、注ぎ口が出るタイプです。

スクリュー式の方がプッシュ式より保温力が高い傾向ですが、ほとんど同等といえます。どちらか、じぶんにとって使い易い方式を優先した方が、僅かな温度差よりもトータルの利益は大きくなるでしょう。

出典:象印

ちなみに スクリュー式/象印 は一見劣後して見えますが、フタとパッキンが一体化した独創的な構造をしており、パッキンを無くしたとかの面倒を解消することに唯一、成功しています。また、最もコンパクトな外形をしています。

子育て哺乳ミルク作りに最適な魔法瓶水筒

赤ちゃんは腹が減ると、ところ構わずいつでも泣くので、ミルク調製目的に使用する水筒は、少なくともWHOが定める要求湯温70℃の保温効力がありながら、片手でさばける利便性が重要になります。

この条件に唯一合致するのは プッシュ式/象印 です。筆者もこれをミルク調製に使用しています。

JIS規格から導く理論上の最強魔法瓶

「魔法瓶」という呼称は、JIS規格によってその6時間後又は10時間後における保温効力が細かく規定されており、劣るものは呼称が使えません。

劣るものや表示のないものがその呼称を使っていないかどうかは、消費者庁が監督しています。

よく分からんメーカーの何やら凄そうな広告を伴う製品は、場合によっては巧みに「保温効力」表示を避けたり、表現を変え、JISに沿わず手前味噌な実験で能力を謳っているかもしれません。それでは何と比較してすごい性能なのか分からなくなってしまいます。

ですから、魔法瓶選びで失敗しないための最も楽で確実な方法は、商品説明にきちんと6時間(10時間)「保温効力」を明示しているものから選ぶことです。

冒頭の一覧表で示したサーモス、象印、タイガーの3社はいずれもJIS準拠の実験結果による保温効力を公式に表示しており、信用に値します。

ところで、JISが具体的にどんな基準なのか以下で見てみると、魔法瓶全般の性能の平均、常識がどんなものか、分かってきます。

JIS規格から分かる、まほうびんの性質

JIS保温効力の試験基準一覧

①室温が20℃の室内でまほうびんに沸騰したお湯を入れ、放置する。
②携帯用まほうびんは6時間、卓上用まほうびんは10時間放置した後、まほうびん内の湯の温度を測定する。
③測定温度が基準値(下記の表)以上であることを確認する。  

容量携帯用6時間
口径39mm未満
携帯用6時間
口径39〜54mm未満
携帯用6時間
口径54mm以上
携帯用6時間
直飲式
卓上10時間
一般式
卓上10時間
空気圧式
0.3L未満62℃47℃
0.3~0.4L未満66℃64℃53℃
0.4~0.6L未満70℃68℃66℃58℃
0.6~0.9L未満74℃72℃70℃62℃57℃
0.9~1.2L未満77℃75℃73℃66℃61℃
1.2~1.5L未満80℃78℃76℃65℃61℃
1.5~1.8L未満82℃80℃78℃68℃64℃
1.8~2.3L未満81℃79℃70℃66℃
2.3L以上80℃71℃67℃
ステンレス鋼製まほうびんの保温効力(直飲式の保冷専用を除く)
(JIS S 2006:2016 表8)

JISが魔法瓶に求める保温性能の基準は、現実的な物理の法則に沿ったものになっています。あなたや筆者が自分で実験しなくても、規格を見れば逆に、魔法瓶という製品全般の持つ物理的な性質、物性が分かります。

容量の大きいものほど、保温効力は高くなる

400mlより600mlの方が、保温力は高くなります。基本的に、容量の大きな魔法瓶ほど、保温効力は高くなります。保冷力も、容量の大きいものほど高くなります。

魔法瓶の保温力的な弱点は飲み口であると冒頭に説明しましたが、魔法瓶水筒は容量が大きくなってもどんどん細長くなるだけで、飲み口の大きさはほとんど変わらないように設計されています。弱点を大きくしたくないからです。

弱点は小さいまま、びんの中のエネルギー総量ないし低温の液体が増える結果となるので、魔法瓶水筒は原則として、容量の大きなものほど最強に近づきます。

注ぎ口の口径が細いものほど、保温効力は高くなる

注ぎ口が細いほど、魔法瓶の保温力的弱点は小さくなるので、保温効力は高くなります。当然保冷力も高くなります。

しかし注ぎ口が細いほど、氷を入れづらいとか、掃除しにくいとか利便性が低下していきます。

保温力と保冷力は比例する

保温効力の高い製品は、規格を見ずとも物理的当然に、保冷力も高い傾向です。保温力最強を探すことは、保冷力最強を探すのとほとんど同じことです。

理論上の最強魔法瓶

ここまで見てきた現行製品の傾向と、JIS規格から読み取れる物理的な事実を総合すると、現実的な範囲での理論上の最強魔法瓶設計は、以下のルールに抽出できます。

最強魔法瓶のルール

魔法瓶の弱点である非真空部(飲み口)が小さいほど、容量が大きいほど、保温効力は最強に近づく

保温時間を延長して最強魔法瓶を自作DIYする方法と検証

途中から段々何の話を読んでいるのか分からなくなったと思いますが、要は最強魔法瓶を探し、原理を知ったならば、最強はじぶんで簡単に作れるし、作るしかないという話です。

高額な登山用でコップ付きしかない水筒を買うのを避けて、今ある手持ちのちゃんとしたメーカーの水筒を流用したいとか、あまり大きすぎる水筒を持ち歩きたくないけど最強は欲しい、という時に自作が有用です。

赤ちゃんのミルク作りに必要な70℃以上のお湯を使うのに活用したいけど、6時間後70℃ギリギリだと不安だという場合にも適切な手法です。

ホットドリンクを自宅で作って会社に持ってくような人は、前夜にドリンクを作って自作最強魔法瓶に入れておけば、翌朝を大幅に時短できます。

作り方は単純で、魔法瓶の弱点である飲み口に、魔法瓶と同じ真空原理の断面構造を持つ、サーモスタンブラー をかぶせます。このタンブラーコップ製品は内径7.5cmあるので、記事の水筒どれにでも適合します。

珍奇・滑稽・狂気、いろんな形容が当てはまりそうですが、どう考えても簡便な範囲で理論的に魔法瓶の弱点を最小化し、効力を最強にするにはこの方法が最適なはずで、事実がどうなのかは実験によって誰でも確認できます。

また、運ぶ時ズレて隙間から熱や冷気が漏れないよう、あらかじめ毛足があってコンパクトな ハーフタオル を巻いておきます。飲む時は普通にコップとして使い、拭き取って戻せばコップ式とプッシュ式のいいとこ取りを兼ねられます。

肝心の保温能力についてですが、以下に検証実験結果を示しておきます。試験時間はJIS同様に各6時間と設定しました。

周囲の温度変化を避けるため試験環境は冷蔵庫内(約5℃)とし、試験中は開閉しないようにしています。試験には象印のプッシュタイプ水筒、SM-STA60-XA を使用しました。単に筆者が昔から使っている私物です。

試験開始温度はいずれも95℃です。

何も無しの実験結果:6時間後95→73℃

まず、この水筒の製品公式保温効力は6時間後73℃です。今回の実験は冷蔵庫内なのでJISの周囲温度20℃よりも厳しい環境下ですが、それでも73℃に保てるという結果になりました。少なくとも余裕持ってJIS基準以上の性能がある良品と言えるでしょう。

73.2℃

断熱コップ+ハーフタオル実験結果:6時間後95→79℃

断熱コップ+ハーフタオル実験結果:6時間後95→79℃
ロボコップ

約5℃の冷蔵庫内というJISよりも厳しい外気温環境下で、先ほど公式保温力最強として選出したトップのサーモス高級水筒が保持する保温効力77℃を上回る結果、79℃を示しました。

79.7℃

原理的に当たり前ですが、単なるまじないや気休めを超えたレベルで、極めて効果的に保温時間を伸ばすことができたという結果です。これは物理的な物性、唯一つの真理なので、誰でもあなたでも、やればほぼ同じ実験結果が得られます。

タオル巻き反証実験結果:6時間後95→74℃

タオル巻き反証実験結果:6時間後95→74℃

逆に飲み口はほったらかしで胴体をタオルで巻くという反証実験も参考に示します。結果としては6時間後に74℃となり、巻いていない時とほとんど変わらない結果となりました。飲み口を包まないと、効果は気休めです。

74℃

原理的に魔法瓶の弱点は飲み口の部分だけであり、胴体の部分は真空層によってほとんど熱損失がありません。従って胴体の保護はあまり断熱効果がありません。タオル巻きで保温力アップを図る場合、飲み口を集中的に包むようにしましょう。

魔法瓶水筒に関するQ&A公式情報解説

最後に、魔法瓶水筒に関するその他の技術的知識をQ&Aでまとめておきます。知っておけば、扱い方に熟練することができるでしょう。

水筒の予熱は必要?効果ある?

魔法瓶水筒を予めお湯で温めておく予熱をすると保温効果が大幅に上がるといった都市伝説がありますが、物理的な原理に反しており、無理のあるものです。

上記の無編集実験動画をご覧いただければわかる通り、沸騰したお湯を投入した直後で予熱なしが97.2℃、予熱ありが97.5℃であり、予熱してもしなくても結果に大差ありません。

びんの内部表面温度は予熱なしが外気温同等の10℃程度、予熱ありが一時的に70℃超となりますが、最終結果の飲み物温度にもたらす効果は0.3℃と誤差の範囲でしかありません。

大抵の魔法瓶の原理は真空と鏡面輻射による遮熱が主であり、ビン自身が蓄えられる冷気や熱はほとんどありません。予熱でビン内部の薄い表面だけ温めてみたところで、ほとんど意味がありません。

真空でなく、やたら分厚い断熱材入りビンとかで、蓄熱で温度を保つような構造の製品ならば予熱も有効ですが、そもそもそれは魔法瓶とは呼べないし、能力も劣ります。

予熱はあまり期待せず、保温力アップには他の効率の良い断熱コップ等の手法を用いた方が良いでしょう。

なぜ魔法瓶は食洗機不可なのか

どの魔法瓶水筒も食洗機は公式に不可となっています。サーモスのみ、パッキンだけ食洗機可能と公式に案内があります。

熱湯さえ入れる可能性がある水筒だというのに、食洗機の一体何が問題だというのでしょうか?

決定的な理由は、高低温の湯水が局所的にかかり続けることで熱膨張による歪みが生まれ、真空層が壊れてしまう確率が上昇するというもので、公式サイトに解説があります。

水筒の通常使用時は中に熱湯を入れても立てておくので、水筒の形状に対しバランスよく熱伝導されるため支障ありませんが、食洗機使用時は逆さで傾けて食洗機カゴに差すので、不均一に加熱あるいは急冷される確率が、低いですが有ります。

大げさに感じるかもしれませんが、食洗機で生まれる温度差は侮れなく、耐熱強化ガラス食器の割れ・爆発 対策方法 でも解説したように傷ついた強化ガラスを破壊する程度の温度差を生じえ、筆者自身も、食洗機内で耐熱強化ガラスの計量カップが温度差によって自壊してしまった経験があります。

シールの真ん中を触るとかすかに真空処理穴を感じることができる
シールの真ん中を触るとかすかに真空処理穴を感じることができる

ちなみに魔法瓶を製造するときは真空処理時の穴が底面にあり、これを保護するためのシールが貼られていますが、これを守るためというもう一つの理由も公式サイトに説明があります。

とはいえ多くの魔法瓶はゴム足カバータイプを除き、真空加熱炉によって約950℃にまで加熱し真空処理時の空気抜き穴を塞ぐ封印処理がなされ、製造されます。保護シールはその封印処理後の仕上がりをカバーする程度のためのものにすぎず、これ自体が真空を担保しているわけではありません。

あくまで温度差による歪みが第一の問題になります。従って登山用高級魔法瓶などにおいて最高の性能を長く維持したいならば、食洗機は避けた方が無難です。

魔法瓶にスポーツドリンクは公式OKなのか

スポーツドリンクは、どのメーカーも使用後すぐ洗えば可と公式サイトや説明書中に表示しています。

魔法びんを見直そう

記事では魔法瓶水筒の保温力に関する確実な調べ方と、現在の最強、そして、自力で保温保冷力を向上させるための効率的で無駄のないDIY方法を提示しました。

ところで、6時間後や10時間後にわずか何℃かの温度が高く、あるいはひんやり保てたからといって、そこまで必死こいて追求する意味はあるでしょうか?

その価値は人それぞれですが、ひとつには、お湯の温度を70℃以上にすることが衛生上強く求められている、赤ちゃんの哺乳ミルク作りにおいて、どんな魔法瓶を使えば何時間安全か、はっきり数字で分かり、確実性をDIYで補強できるようになります。

コーヒー紅茶にお湯をよく使うなら、保温強化DIYした魔法瓶のお湯から沸かすとかなり時短になり、毎回水から煮沸するより節約時短できるでしょう。あるいは出勤前夜に強化魔法瓶へ作っておくことで、朝の時短ができ、ギリギリまで寝ていられます。

登山では魔法瓶に冷たいドリンクを入れて行くのを止め、熱湯を満載して真空コップを被せれば、山頂で湯を沸かす時に究極の超高速時短ができます。

大抵の魔法瓶で、満載の熱湯が6時間後に約70℃保たれていることがJISで保障されていると知っていれば、そして物理法則に沿ったDIYでその効力を無駄なく延長強化できれば、いつか文字通り魔法のように熱のエネルギーを使いこなせる、暮らしの時短アイデアにつながることもあるでしょう。

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