食器に使える接着剤 タイトボンド応用4例

タイトボンドⅢ DIYにベストな進化形木工ボンド では、タイトボンドの基本性能とシリーズ商品との比較、使い方のコツを紹介しました。

この記事では、食器に使える接着剤を探している方に数種の選択肢と共にタイトボンド3をご紹介し、どれを選べば良いかの助けを提供できればと思います。

また、タイトボンドを特殊な用途ーパテやニカワの代用、レジンや防水剤の代用、その他この接着剤の優れた特徴を活かしてDIYなどに幅広く応用したいとお考えの方に、筆者の実験結果を交えて実例をご紹介します。

具体的な食器修理の手順については、安全・簡単格安 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方 をご覧ください。

食器に使える接着剤 タイトボンド応用4例
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タイトボンド3の食器への使用

タイトボンドⅢはメーカーによって食品安全性の認証が取得されており、食器への使用は十分検討できます。

あとはどれほどの高温、低温、酸に耐えられるのか タイトボンドの米国公式サイト を見てみましょう。

米国公式サイト情報

【認証】
〇ANSI / HPVA Type I仕様(防水)
〇食品の間接接触についてFDA(米国食品医薬品局)に承認されており、キッチンでの使用に最適
【成分・物性】
〇成分:有機高分子化合物52%、水48%
〇VOC検出量:9g/L
〇引火点:93.3℃
〇凍結/解凍安定性:安定
〇pH:2.5
【注意事項】
〇凍結しないこと

メーカー自身が公的機関の承認を得てキッチンでの使用も推奨しており、食品安全性はある程度信頼しても良いでしょう。

成分にも溶剤を含んでいないことが分かります。公式情報では成分は Advanced Proprietary Polymer となっており、国内代理店の輸入品ラベルには有機高分子化合物とあります。

Advanced Proprietary Polymer

ただしVOCはゼロではなく、微量ながら含まれています。ゼロをお求めの方はウルシの使用をご検討ください。このあと記載しています。

引火点は93.3度ですから、食洗機の洗浄はOKです。ただし洗浄直後食器が高熱になっている間は接着力が1/5程度に落ちます。

厳密にはタイトボンドの公式には耐熱温度情報があり、通常4000psiの強度が65度以上で800psiに落ちます。換算すると1平方cmあたり56kgfの力です。大抵の食器の通常使用には耐えると思われます。

ちなみに筆者の実験では、タイトボンドでカップを修理後に水を入れて電子レンジでチンしましたが、特に問題なく使用できました。接着剤がちゃんと中まで固まっていれば、レンジもOKのようです。

その他、凍結と解凍を繰り返しても成分に変化は起きないようですが、もとの成分に水分が多いため凍結すると体積が膨張します。

割れた食器の修理に用いた場合などは凍結すると再び破損してしまうので注意しましょう。

pHは2.5となっており、これは酢と同じ程度の酸性です。もとから酸性なので食品の酸による影響は心配ないでしょう。

食品安全性のある類似接着剤7種との比較

国内で食品衛生法に適合する接着剤4種と、天然ウルシ、ウルシ代替品のカシュー及びウレタン樹脂についてざっと比較し、タイトボンドとどう使い分けるか検討しておくとより失敗が少なくなります。

食品衛生法に適合し、瞬間接着剤なので使用目的次第では便利です。

食品衛生法に適合しますが、接着剤というよりパテです。最小容量も450gと多めです。

高価で、使用にガンが必要なため家庭でのDIY目的使用には不便です。

食品衛生法適合ですが、使用にガンの購入が必要です。

これらはいずれも産業用の製品なので、家庭で利用するには量が多すぎたりAmazonで買えなかったりで色々と不便だと思います。

ウルシとの比較

天然素材で伝統的に食器の塗料(漆器)や補修材料(金継ぎ)として使われてきました。熱湯でなければ耐えられるので汁椀などにも使えます。しかし非常に高価です。

食品安全性を最優先に、接着強度と利便性、コストと見栄えを総合的に考えるならば、 タイトボンド3で接着後表面にウルシを塗ると両方のメリットを活かせるでしょう。

亀裂面をあえて目立つ金銀で塗る金継ぎ修理法

当サイトではこの概念を一歩進め、安全性を最優先に、漆の欠点であった高い価格、手につくとかぶれる性質、多数の道具と時間を要する煩雑性、を解決した技法を制作しました。ぜひ 安全・簡単格安 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方 をご一読ください。

ウルシの代用品として作られたもので、ウレタン樹脂です。ウレタン樹脂のなかには品名にうるしを謳うものもあるので天然ウルシにこだわる方は購入前に注意が必要です。

カシュー(ウレタン樹脂ウルシ)の価格は天然ウルシよりずっと安いです。どちらかというと接着剤というより塗料に近いものです。

人工のウレタン樹脂でも食品衛生法に適合する物があります。ただ、人工素材で食品安全性を有する接着剤という意味では、タイトボンド3の方が多くの点でより便利な特性があると思います。

なおニカワは天然素材ですが匂いますし熱に弱く食器には不適です。

タイトボンド3の特徴を活かしたその他のDIY応用アイデア例

紙粘土作品の耐水加工として

紙粘土作品の耐水加工として

子供が紙粘土で作ったコップや鉢といった作品は、そのままでは耐水性がなく、水を入れると次第に染みて溶けてしまいます。

そういう時はタイトボンドを小皿に出し、学校の絵筆か何かで内側に塗ってみましょう。接着剤自体に耐水性が有るので防水材料として機能します。

さらに冒頭説明しましたがこの接着剤は食品安全性の公的認証があり、他のありふれた合成防水剤を用いるよりはるかに健全です。

接着剤自体は水性なので、塗り終わった筆は水洗いすれば、また授業で使えます。それに、指に触れても安全な接着剤なので安心して取り組ませられます。

防水コーティングの代用として

接着剤自体に耐水性が有るので防水材料として機能します。ただし硬化時の収縮を考慮して防水したい対象を十分カバーするような使い方がコツです。

防水コーティングの代用として

写真はラップで磁石防水を施した上、磁石を石鹸に埋め込んで表面をタイトボンドで防水コーティング的に覆ってみたものです。

タイトボンドの耐水性を活かして磁石を埋め、陶器の洗面台に100均の磁性ステンレス板をタイトボンドで貼って石鹸を浮かせてみました。石鹸カス汚れや邪魔な石鹸皿に悩まされなくなります。

石鹸を洗面台の中に浮かす
石鹸を洗面台の中に浮かす

この方法を実際に試してみたい方は、 100均超強力マグネット 防水加工DIY方法2種と実用例11選 をご覧ください。石鹸やスポンジをはじめ浮かせて清潔便利な水回り品を多数取り扱っています。

なお、タイトボンドは後で加熱して楽にはがせます。詳しくは タイトボンドⅢ DIYにベストな進化形木工ボンド をご覧ください。

にかわやパテの代用として

パテとしての用法は公式には案内されていません。しかし成分の半分が水なので、水で薄めたり木屑を混ぜたりして粘度をコントロールして利用することは出来ます。

メーカー公式情報

〇成分:有機高分子化合物52%、水48%
〇粘度:4200cps

初期状態で粘度4200cps、だいたい高級系のシャンプーくらいのイメージです。

木屑やアクリルパウダーを混ぜることは可能ですが、ネバネバになるだけで粘土のようにはなりません。

なので成型するような使い方はできませんが、スキマ埋めや補修剤の代用としてなら使用できます。

当サイトではこの混合特性と食品安全性を活かし、欠けたり破片を失った食器を直す技術として 欠けた食器のパテ補修 食品安全性素材でバラバラ食器も再生 を完成させました。

この記事で修理創作に取り組み、成功させた読者の方からデフラグライフのツイッターで報告もいただいています。誰にも簡単なのでいずれぜひやってみてください。

割れた食器が手元に無くても、100均食器を骨董品のようにデザインできるようになります。鬼滅の刃が流行っているので、和風グッズとして制作し、単行本の脇に添えてみてはいかがでしょう。

タイトボンドで和風グッズ

パテと逆に広い面積に一気に塗りたいときは、接着強度は落ちますがボンド8:水2くらいに薄めれば粘度が下がりハケで塗れるようになるので丁度良いです。

にかわの代用としては、下記タイトボンドシリーズの茶色のボトルが適切で廉価です。

レジンの代用として

レジンの代用として

レジンの代用として使うことはできますが、硬さが足りないのであくまで試作用が限界です。参考硬度は1です。

型はシリコンが適します。仕上がりは茶色で、切削できる程度の硬さはありますが爪を立てると傷が残る程度の柔らかさです。

3mm以上の厚いものは完全硬化までに丸4日以上かかります。また、収縮も大きいです。

高価で硬化時間に縛られる本物のレジンで作る前の簡易なテスト、試作としての用途が適すると思います。

タイトボンドの特性を活かしてDIYアイデアの幅を広げてみよう

水廻りの品を逆さ吊りで浮かす
水廻りの品を逆さ吊りで浮かす

食器へ使用可能な接着剤には、単に食器の修理をするという以上の使い道があります。

冒頭紹介した 安全・簡単格安 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方 では伝統技能を現代の道具で簡単に再現することで、安い食器を骨董品のように作り変える方法を紹介しています。

あるいは食器類に防水磁石を接着することで食器を浮かせて収納し、常に乾いた清潔な状態にしておける使い道もあります。小物やガジェット類に磁石を取り付ける方法100均超強力マグネット 防水加工DIY方法2種と実用例11選 をご覧ください。

ほかにもDIYアイデアの視野を広げるものとして、この記事の情報がお役に立てばと思います。タイトボンドの正確な基本性能や類似品との比較、使い方のコツについては、タイトボンドⅢ DIYにベストな進化形木工ボンド をご覧ください。

読者コメント

  1. うらべちえこ より:

    たいへんわかりやすい、丁寧な解説ほんとうにありがとうございます。 ここまで念入りに調査される情熱と根気に感銘を受けています。
    タイトボンドⅢ、優秀な接着剤のようですが、長期的な使用に関してのご意見はおありでしょうか? 写真掲載の食器など、現在までどのくらい時間経過観察されていらっしゃいますか。 タイトボンドを使った作品をギフトに差し上げて、しばらくしたら壊れてしまった、などの事態がないか少し懸念しております、
    見ず知らずのものがいきなりコメント差し上げて恐縮ですが、
    よろしくお願いいたします。

    • デフラグライフ より:

      読み込んでいただき、ありがとうございます。とても良い目的をお持ちのようで、なおさら慎重に考えていることと思います。
      ご相談の件は、まず 安全・簡単格安DIY 現代的”金継ぎ”食器修理のやり方 でギフトを作ろうとしており、そこで示した白や黒の筆者の金継ぎ作品の現在の様子を知りたいものとして、回答します。

      まず長期使用に関して、私は2020年5月の初稿以来2年以上に渡り熱いコーヒー専用で食洗機を併用し経過を観察していますが、使用に支障のある変化は生じていません。
      表面の金色は、コーヒーのステインによる影響もあるのかも知れませんが、最初より少しくすんで来たように思います。
      経年でわずかずつ変わるので、昔の写真や新しい作品と比較した時気づきます。
      つまり出来栄えや耐久性に工業製品ほどの結果は期待できないので、ギフトになさる場合は、これがあくまであなたの手になるDIYの作品であり、もしかしたら将来至らぬ部分の生じる可能性があるかも知れないことを、先方にお伝えする必要があると思います。

      でも、手作りの贈り物を考えるとき、この方法で作品を作って送ってみたいという目的は、きっと長期的にも良い結果につながるというのが、私の意見です。

      劣化については、公式に賞味期限2年が明示されていますが、これは2年で接着強度がなくなるのではなく、徐々に乾燥が進んで使いにくくなるものの製品が期限切れしたり使用不能になるものでは無いと公式Q&Aで明示されています。
      2年という数字の理解のために、例えば伝統金継ぎにも用いられる生漆の賞味期限は、6ヶ月です。おなじみ木工ボンドセメダインは1~2年と、それぞれ公式が回答しています。

      強度については分析記事でも扱いましたが、この接着剤は4000psi、加熱時でも800psiの接着強度があることが公式に明示されています。
      この数値の理解のために、例えば伝統金継ぎにも用いられる漆の接着強度は、論文の例を引けば最適湿度の最高性能で6MPa、換算すると870psiの強度です。

      そしてどれも、毎日の日常利用で超長期の使用にどう耐えたかは定量的な試験結果の公表がありません。誰も高価な伝統金継ぎを食洗機に入れたりせず、しまい込むからです。
      各接着剤会社もそれぞれの使用例が多岐に渡りすぎて、具体的に長期試験した例は示されていません。

      しかしタイトボンドは、ANSI Type1という屋外耐水認証を取得している点を比較記事で扱いました。
      これは、約15センチ角の白樺平板を3層に貼り合わせたテストピースを、4時間水中で煮沸したのち、60度のオーブンで20時間焼き、その後さらに再び4時間煮沸した後、即座に流水で急冷し、テストピースをせん断破壊(シア破壊。横ずれ方向の破壊で、ほとんどの接着剤にとって最も弱点となる破壊性状)試験して規格に定めた強度に耐えられるかを試験し、合格したものです。
      この劣悪な試験環境は、毎日のコーヒーや食洗機といった使用をテストすることに通ずるものがあります。

      DIYとなると定量的な試験が何も無いので、工業製品のようにはいかないかも知れないと、私はあなたに、あなたも贈る相手にお伝えしなければなりません。
      ただその方法に可能な限り公的な根拠のある情報と比較に基づいた性能があるならば、あなたの大切に考える贈り物に求める資質に足るか少なくとも、力になれるのではないかと思います。

  2. SaTo より:

    両親が高齢になり、お気に入りの食器なのに微妙に欠けたものがいくつかできてしまいました。
    参考にさせて頂き補修にチャレンジしてみたいと思います。感謝です。

  3. こやぎ より:

    親族が形見の食器に細くヒビが入ってしまい、捨てるかどうか迷っています。当初金継ぎをしたらどうかと思いましたが、ネット検索でDIY出来て、廉価なので、このボンドをお勧めしようと思います。ただ私自身は使った事がなく、ヒビがとても細いので、隙間に入らない時は上から塗るだけでも強度は保てるか心配しています。もし、そのようになさったこと何あればアドバイスいただけると助かります。
    また、金継ぎが目立つのが気になるそうです。白色、または銀色などもあるようですので、それを塗った場合雰囲気がどのように変わるのか、併せて教えていただけると嬉しいです。

    • デフラグライフ より:

      陶器のヒビ補修については、金継ぎ記事中で「よしえ」さんへのコメント回答として記載していますので参考にしてみてください。
      またヒビ補修の実例としては、パテ記事の後半部に読者の作例として「ナカムラヒトミ」さんや「agari」さんが、実際にヒビ補修したと思われる写真を掲載しているので、見てみてください。補修ラインが途中で止まっている箇所が、ヒビの貫入を上からゴールドライナーのみ実施した部分と思われます。
      ヒビ補修の場合、浸透の期待できないボンドは諦めて、ライナーのみにとどめるのが成功例豊富で確実です。ただしライナーは金と黒の二色しかありません。
      各色ペイント系なら他の色も選べますが、筆でヒビなみに細く描くのは至難です。
      他の色で継いだ経験は私にはありませんが、主流は銀・赤・青です。検索するといくつか作例を見ることができるので雰囲気の参考になるかもしれません。

      私には状況を推測するしかできませんが、じぶんの所持品でない場合は、当の本人にこのサイトの金継ぎ記事を見せるなどして、やるかどうか強く勧めず本人にじっくり決めてもらったほうが良さそうに思えます。
      あくまでDIYなので、失敗する確率はあります。ですから本人が自分の意志と手で実施することが重要です。どちらかが欠けていると、失敗や手作りならではの完成度に対して失望させてしまうことも考えられます。
      こんな方法や実例もあるよと教えてあげて、その先はそっと見守ってあげられるとよいですね。